お化け屋敷の準備
俺達のクラスは蓮華祭でお化け屋敷をする事になり、連日大道具や衣装作りに励んでいる。
最初は大道具係になりまあ適当にやろうと思っていたが、今では大マジメにやっている。
何故なら、大道具係には……。
「ふふふ~ん」
そう、楽しそうに幽霊の人形を作っている神野さんがいるからだ。
神野さんが大道具係になった時は、メイティーの力と思ったのだがどうやら偶然らしい。
何故こういう時に力を使わないのか不思議すぎる。
わざとなのか、こういう事に頭が回らないのか……今までの言動や行動を考えると後者だな。
まぁ偶然とはいえ神野さんと一緒なんだから素直に嬉しい。
「どう? うまくいっている?」
「あっ香夏子ちゃん。委員会の仕事中なんじゃ?」
「今は見回り中。そのついでに顔を出したってわけ」
香夏子は蓮華祭実行委員会の仕事を優先しないといけない。
だから、俺達の手伝いまで手が回らないらしい。
香夏子自身、蓮華祭を盛り上げようと委員会に立候補したが……それはそれで後悔をしたみたいだ。
クラスみんなで準備するという青春の1ページができない! と嘆いた。
俺にとっては、そこまで嘆く事なのかなと思ってしまった。
「そうだったんだ。あっ香夏子ちゃん。見て見て、私の力作を!」
「力作? どれど…………」
香夏子が神野さんの作った幽霊の人形を見て絶句している。
いや、そもそもあれを幽霊と言っていいのかわからない。
顔はカラフルでピカソの様な独特なタッチ。
体は胴体をはじめ腕、足など絶対に曲がらない方向に曲がっていたりする。
ある意味、これはこれで怖いけど……何かが違うんだよな。
どちらかと言えば、アートの様な気がする。
まぁ芸術のわからない俺には何とも言えないがな。
「どうかな? 恐ろしく恨みを込めた感じにしたんだけど」
恨みを込めたわりに、イエローとかピンクとか明るい色を使っているのはどうなんだろうか。
だから俺にはとてもそうには見えない。
「えっ!? ……あ~……ん~……」
流石の香夏子も返事に困っている。
「……いっいいんじゃないかな! とても怖いよ!」
そう言いながらも、香夏子の目が泳ぎまくっている。
これは嘘だ、絶対そう思っていないなこれは。
いや……怖いって部分はあるで意味ではあっているか。
「ほんとに? やった~じゃあ次はっと……」
神野さんが次の作品に取り掛かろうとしている。
次はどんなアートが出来るのやら。
「……ハル~、ちょっといい?」
「ん?」
あーこれはあの芸術に対しての呼び出しだな。
「ちょっと、どうするのよ!? あれじゃあ、お化け屋敷じゃなくてアートの展覧会になっちゃじゃないの!」
やっぱり。
「そう言われてもな……誰も止められなかったんだ」
「どうして!?」
「本人が真剣な顔をして汗水流しながら作っているのを見て、それを止められるか? つか、お前も指摘できてなかったじゃないか」
「うっそれはそうだけど……」
とはいえ、香夏子の言う通りこのままだとアートの展覧会になってしまう。
神野さんには悪いが何かしらの手を打つか。
「香夏子の良い事もわかる。とりあえず、セットする時にカツラを深めに被せたり暗闇で見えにくい様にするよ」
「うん、よろしく……あっそうだ。申し訳ないんだけど、後で買い出しの手伝いをしてくれない?」
ええ……何で俺が行かないといけないんだ。
買い出しなんて暇そうなやつに行かせればいいじゃないか。
大道具作りが忙しいからとか言って断ろう。
「ちょっと量が多いから、命一人じゃ大変だと……」
「行かせていただきます!」
※
「手伝ってくれてありがとうね。助かったよ~」
「これくらいお安い御用だよ」
にしても、2リットルのペットボトルが5本。
おにぎり等の食べ物が数個。
大道具に使う材料が数種類。
香夏子の奴、神野さんにどれだけ買わせているんだ。
『まったく、急な2人っきりイベントを起こさないでくださいます? 流石のアタシでも準備どころか作戦を考える暇もなかったわ』
仕方ないだろう、俺だってこんな事になるだなんて思いもしなかったんだから。
「タコ公園の前にあった駄菓子屋さんが残っていたらな~。帰り道だし、ついでにお菓子も買えたのに……」
まだ買いますか。
まぁ駄菓子は軽い物だからいいけど。
「そういえばさ、ランダムガチャガチャって覚えている?」
「あーあれね」
駄菓子屋の前に置いてあるガチャガチャの一つだ。
中身は駄菓子屋のおばちゃんの気分しだいの奴。
だから、女の子向けが結構多かったんだよな。
「覚えてる憶えてる。俺的にハズレの物ばっかりだったけどね」
それでも回していたのは、アタリの入ったカプセルがあるからだ。
アタリを引ければ店の商品1つをタダで貰えたからな。
あれ? 待てよ……今考えると、ガチャガチャで100円を入れて回す。
で、アタリが出て店の商品と交換しても10円とか高くても150円位のお菓子を交換……これって、明らかに駄菓子屋のおばちゃんが得をするシステムじゃん。
うわー小学生時代だからそこまで考えていなかった……おばちゃんにしてやられた。
「あははは、わかる~。昔の私もそう思った」
女の子向けの物でも、神野さんはいらない思ったのか。
おばちゃんってセンスなかったのか。
「でもね、この髪飾りだけは別なんだ。大切な人から貰った……私のお気に入り」
神野さんがいつもつけている赤いハートの髪留めにはそんな話があったのか。
大切な人……一体誰なんだ!? 親? 友達? ……まっまさか恋人!?
「あっいけない! もうこんな時間! 種島くん、香夏子ちゃんが怒っちゃうから早く帰ろう!」
「……」
うわあああああああ! その大切な人が誰なのかすごく気になる!
かといって、なんか気軽に聞ける事じゃないし!
「種島くん? 聞いてる?」
「……ハッ! き、聞いてるよ! 早く帰ろう!」
「? うん」
やばいな、これはしばらく気になって色々集中できんかも。
あっそうだ! 情報通のメイティーに後で聞いて……。
『むむむむ……大切な人か……誰なのかしら……』
こんな時に限って情報が無いんかい!
情報こそ最大の武器って言っていませんでしたか?
いや……これに関したら、何も聞けない俺がいるから攻めれる立場じゃないか。
にしても、気になるなー今夜寝れるのだろうか。
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