7章 とある女神サマ、運命の文化祭へ

2学期開始

 色々あった夏休みも終わり、始業式の日から早1週間ちょいらった。

 正直、始業式は不安の気持ちでいっぱいだった。

 香夏子の告白……あの時は友達のままだと言ってくれたものの、本当に今まで通りに接してくれるのだろうかと……。

 しかし、そんな不安とは裏腹に香夏子は始業式の日に挨拶をしてくれ、いつもの様に接してくれる。

 うだうだと考えていた自分が実に情けない。

 ただ、あの日から変わった奴もいる。


『う~む……なるほど……』


 メイティーだ。

 やたらやる気が出ているのか、聖書という名の漫画の読む量が明らかに増えている。

 しかも、本の種類まで増加。

 まぁ知識を入れるのはメイティーにとって大事と前言ってはいたが……読んでいる本の中に、歴史本が混じっているんだよな。

 俺的に、歴史本と恋愛は全く結びつかない……本人がまじめに読んでいるからそこの事をいうと野暮に感じるからスルーしているが、やっぱり何か違う気がしてならない。


「は~い、みんな座って~。蓮華祭について話し合うわよ~」


 横永先生が教室に入って来た。

 そっか、今日のHRは蓮華祭の事を話す……うん、全く何も考えていなかった。

 まぁ特にやりたい事もないし、みんなに合わせよっと。


「それじゃあ三瓶くん、金森さん、よろしくね」


「うっす」

「は~い」


 2人が前に出て来た。

 そういえば、蓮華祭の実行委員だったな。


『……ん? 蓮華祭? なにそれ』


 あーメイティーが知るはずもないよな。

 なら、一応教えておくか。

 恋愛として盛り上がるイベントの一つだし。


【文化祭の事だ、9月末にやるんだよ。必ず1クラスで出し物をしないといけないんだ】


 こんな感じでいいか。

 にしても、必ず1クラスで出し物をって言うのは辛いよな。

 正直、俺は何もせずに見て回りたい……。


『ふむふむ……文化祭! これは聖書に必ず出てくるイベントじゃないの! 絶対に利用しなければ!』


 メイティーが鼻息を荒くしている。

 いや、流石に興奮し過ぎでは?


「じゃあ私達クラスの出し物決めるけど、何か案がある人~」


『アタシは校舎の屋上から告白する奴がいいと思うわ! これを提案しなさい!』


 いや、それ出し物じゃねぇし! 企画物だし!

 そんな物言えるかっての!


「やっぱカフェじゃね?」

「だとしたらコスプレカフェでしょ!」

「私は焼きそばとかがいいと思うな~」

「それだと、他のクラスと被らない?」

「カレー屋とか!」

「それはお前が食いたいだけだろ」

「じゃあ、ニュニュピュシュリィなんてどう?」

「どこの料理だよ、それ!?」


 クラスのあちこちで意見が出ている。

 みんなやる気だなーメイティーのやる気の気持ちが伝染でもしちゃったんだろうか。


「ねぇハルルンは何をしたのぉ?」


「あー……特に思いつかないんだよな」


「だと思ったぁ」


 じゃあ何で聞いたんだよ。


「私はお化け屋敷をやりたいな~って思ってるの」


 へぇー意外だな。

 神野さんならカフェとか言いそうなのに。


「おぉ~それもいいねぇ。うらめしやぁ~! ってやりたいなぁ」


 その口調を聞く限り、星木さんが幽霊役をしても全く怖くなさそうだ。

 むしろ和んじゃいそう。


「こりゃ収拾がつかないな……先生、どうしよう?」


 流石の香夏子も困っている。

 三瓶なんて、香夏子の横に突っ立っているだけで何もしようとしないし。

 する気が無いのに、何で実行委員なんかに候補をしたんだよ。


「ん~……よし、みんな聞いて~! こうしましょう。それぞれ、やりたいものを紙に描いて箱に入れるの。で、引いた物をする。恨みっこなしね」


 なるほど、横永先生お得意のクジで決めるのか。

 特に考えがない俺は別にそれでいいかな。


「それでいいと思いま~す」

「このままじゃあ埒が明かないしな」

「ニュニュピュシュリィおすすめなのに」

「だから、どこの食べ物なんだよ……」


「じゃあその方法でいきますか。みんな~紙にやりたいものを書いて、箱にれてね~」


 さて、書くとすれば……。


『校舎の屋上から告白って書くのよ! いい!?』


 いや、書かないって。

 俺が書くのは神野さんのやりたいものだからな。



「これで全員の分が入ったかな? それじゃあいくよ~」


 香夏子が箱に手をつっこんで、紙を混ぜている。


『フッフフ……必ずアタシのクジを引かせてやるんだから』


 メイティーがクジボックスの中に顔と手を突っ込んだ。

 前の席替えみたいに、中身を見て不正をする気だろうが……それは無理なんだよ。


『……あれ!? ない! どこにも校舎の屋上から告白って紙がない!』


 そんな事を書く奴なんているわけがない。

 無論、俺も書いてない。

 書いたのは、お化け屋敷なんだからな。


『ちょっと! なんでも校舎の屋上から告白って書かなかったのよ!』


 ギャーギャー騒いでいるが無視無視。

 そもそもだ、仮にそれを書いて引いた場合、絶対にやり直しになるのが目に見えている。

 そのくらいはちゃんと考えてほしいな。


「――これだ! え~と……お化け屋敷……。はい、うちのクラスはお化け屋敷に決定!」


「やった~!」

『ええっ!?』


 おお、神野さんの希望するお化け屋敷が引かれた。


「メイっち~やったねぇ~」


「うん!」


『お化け屋敷って……女神であるアタシが、なんでお化けをやらないといけないのよ……』


 神野さんと星木さんが喜んで両手を繋ぎ、その横でメイティーが跪き頭を垂れる。

 確かに女神がお化け屋敷ってのおかしいが、なんでお前が参加する事になっているんだ?

 見えないし、俺らのクラスメイトじゃないだろ。

 まぁ今はそんな細かい事はいいか、なにせ神野さんのやりたいものになったんだ。

 こりゃあ俺も頑張らないとな!

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