1-12、決戦の連接棍《フレイル》
それは討伐した魔物の力を自分のものとする
オレが今さっき使って見せた
〈銀糸鋼線〉は巨大な蜘蛛の魔物
〈翠風旋回〉は風を操る鳥の魔物
〈紅爆結晶〉は鱗が爆発する火山地帯の魔物
だが、
珍しい
……思い出したら涙が出てきたわ。
まぁ、そんな辛い辛い日々を説明したところで、
結局、他人の苦労を心の底から理解できるやつなんて存在しない。
『珍シイトハ、選バレタトイウコトダロウ……! オレノ
そういや、あいつは
「足りねえモン挙げてたらキリがねえだろ。みんな配られた
『黙レ! 俺ハ俺ヲ否定スル言葉ナド聞カヌ! 全テハ……俺ヲ勇者ニ選バナカッタ神ガ悪イノダァ!』
〈紅爆結晶〉の直撃を食らったはずの
あぁ、そうか。
こいつは膨れ上がった自意識に飲み込まれちまったんだな。
挫折の原因が自分にあるとは考えられず、全てを運のせいにした。
選ばれなかったから
特別ではなかったから
だから自分はうまくやれなかったのだと。
他人への恨みと妬みが、奴を悪魔に変えた。勇者になっただけのガキんちょ相手に嫉妬に狂ってしまうほどに。
「めんどくせぇなぁああ!」
オレは木から飛び降りると、地面に刺さっていたもう一本の剣を引き抜く。こいつでもう一方の目も潰してやる。
だが、オレが剣を手に取った瞬間、高速で伸びてきた何かに弾かれ手放してしまった。
伸びてきたのは
『コレデ武器ハナイ! 貴様ハモハヤ俺ヲ傷ツケルコトナドデキン』
舌を引き戻し、剣を回収した
残念ながら、奴の言うことは概ね正しい。オレの
『喜ベ、返シテヤルゾ!』
オレは〈翠風旋回〉で宙を蹴り、残骸の弾幕の外へ出る。
だが、その判断は裏目に出た。
『死ネ、無職』
回避した場所へ、
今の体勢じゃ〈翠風旋回〉は使えない。〈銀糸鋼線〉の移動も間に合わない。だったらできることは一つだ。
「〈紅爆結晶〉!」
手の中で精製した結晶を、ありったけ
小爆発が起きた。衝撃で
「痛ってぇ……!」
地面に転がったオレは、咳き込みながら立ち上がる。痛いのは久しぶりだ。無職になってからの3年間、オレはこの感覚から逃げていた。
痛いのは嫌だ。誰だって嫌だ。
だが、痛みに向き合わなければならない時はたまにある。多分今が、その時だ。
『コノ程度カ。ヤハリ武器モナイ貴様デハ俺ヲ傷付ケルコトハデキンラシイナ。終ワリダ。ジワジワト殺シテヤル』
羨んだり、見下したり、感情の変化が忙しいな、こいつ。
「……武器がない、か。あんたは自分が何を持っていたかなんて、忘れちまったみたいだな」
『ナニ?』
オレの言葉に眉を顰める
「一瞬二斬〈燕斬り〉!」
『オノレ、勇者ァ……!』
「ボクを忘れてもらっちゃ困るよ!」
リースだ。
小さな女勇者が残る力を振り絞って背後から不意を打ったのだ。
あれだけコテンパンにやられて、それでも立ち向かう体力と気力があったことには驚いた。もしかしたらあいつは、本物の勇者になれるかもしれない。
さて、総仕上げといこうか。
オレは
それは——悪魔と化してしまった男が、冒険者時代に握っていた金属製の
『キ、貴様、ソレハ俺ノ武器……!』
「そうさ。お前が捨てちまったってなら、せいぜい有効活用させてもらうぜ」
〈銀糸鋼線〉の先に巻きつけた
過剰に遠心力が加わった鉄の塊は、文字通りえげつない威力を叩き出す——!
「銀糸操術〈
横からぶつけた
流星のごとき一撃を受け、
「……もし、あんたが仲間を、それから冒険者であることを捨ててなかったら、今立っていたのはあんたかもしれねえな」
オレはうつ伏せに倒れて動かない
「まぁ、
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