1-4、春の魔茸《マタンゴ》駆除祭り
「んー……昼過ぎだから目ぼしい
小柄な体を生かして他の
ほとんどの
午後になっても残っているのは難易度の割に報酬が安いとか、指定された場所が遠いとか、何かしらの問題を抱えていることが多い。
「どれどれ……『廃墟の街の
「でも、困っている人がいるなら力になりたい。ボクたちでできる
「面倒なのはダメだ。早い、安全、楽の三拍子が揃った
「そんなぁ……」
嫌がるリースを引きずって、常設の依頼が貼り出された掲示板に移動する。
何らかの理由で急に増えた魔物を定期的に駆除したり、常に供給が不足している素材の採取だったりといった
「で、でも、ボクは戦っているところをシグルイさんに見てほしいんです! 冒険者になってから、何度か戦ったんですが、なんだかうまくいかないことが多くて……
「だったらいいのがあるぞ。
オレは掲示板の中央に大きく貼られた『春の
だが、気候が温暖になると増殖する厄介な特性を持っているため、春先から夏にかけては駆除依頼が常に貼り出されている状態なのだ。その微妙に気持ち悪い見た目から、敬遠する冒険者も少なくない。
「うん……常設だと魔物と戦う
さっきまでの楽しそうな顔は何処へやら、若干顔が青ざめたリースが拳を握った。
受付に行くと事務作業をしていた職員の男に声をかけ、常設の
魔物にも危険度の等級があるように、冒険者にも格がある。
一番低い
一皮向けた
一定の実力が認められた
一人前となった
手練れの証の
抜きん出た力を持つ
力の極地である
大体の冒険者は
リースが見せたのは駆け出しを示す
ちなみにこの冒険者証は、持ち主の血を混ぜて女神の祝福を与えて作ることで、本人以外が悪用できないようになっているらしい。
「あと、こちらの方も一緒に
リースがオレの服の袖を引っ張り言った。職員の男は羽根ペンを動かす手を止め、こちらに怪訝そうな目を向けてくる。
「お連れの方は
職員の男は慣れた口上で言った。オレは少しだけ笑みを浮かべて答える。
「大丈夫大丈夫。字くらい書けるさ」
読み書きは冒険者となった時に、かつての仲間から少しずつ教わってできるようになった。数少ない自慢の一つだ。
オレは職員からペンを受け取ると、自信を込めて大きい文字で記入する。
名前:シグルイ=ユラハ
装備:無
経歴:わすれた
特記事項:酒飲みちゃい
提出された用紙を見てぽかんと口を開けて固まる職員を後にして、オレはさっさと
「さ、やること決めたらちゃっちゃと済ませようぜ、リース」
「え? あ、はい!」
固まる職員とオレの間でおろおろ困惑していたリースだったが、すぐに小走りで付いてきた。
久々の労働は面倒この上ないが、終わればツケ払いがしばらく許される上にいい酒とステーキが待っている。今から楽しみだ。
なんだ? この絡みつくような視線は。
じっくり観察されているみたいで嫌な気分だ。不審者を面白半分に見ているやつか、それとも……まぁ、どうでもいいことか。
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