【3】
男は再び、同じ路を歩いていた。
やがて、例の空間に辿り着き、目当ての物がある筈の場所を振り向く。
だが今日は、人形は椅子の上には居らず、その隣にも姿は見えなかった。
「あれ」
男は訝しみ、周囲をぐるりと見渡す。何もない空間が拡がっているだけだった。
残念、留守か。
男はそう見当をつけ、その日は大人しくもと来た路を戻ることにした。
たまに席を外している事がある、と人形本人が言っていた事を思い出し、男は偶然留守中に当たってしまったのだろうと思った。
明日はきっと居るだろう、そう思い、男は大人しく、踵を返した。
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