第11話 悪夢
たまに見る夢。
日が沈み赤みががる日がカーテン隙間から差し込んで部屋を照らす。
差し込む光の中で埃がキラキラと目に映り、自動車の通る音が不規則に聞こえる。どこか遠くの方から電車の遮断器の音も聞こえてくる。蛇口を締め忘れているのかポタポタ水と垂れる音が聞こえてくる。
耳を澄ますと私の周りからは不規則に聞こえてくる音は聴こえなくなり、水の音と他に単調に『 』 が聴こえる。
ただじっとカーテンから漏れ出る光を見つめる。
換気もされないこの部屋の匂いは埃っぽい匂いが鼻にかかる。
開けるべきか、それともここから消えてしまったほうがいいか。
ただ音を立てずにすっと私はここに立ち留まる。
聴こえてくる単調な『 』リズムが私に取っては不快だ。
中途半端に開かれた扉は私の帰りを待ち望んではいない。けれど、手を伸ばしてそっと閉じることも出来る勇気なんて私は持ち合わせていない。
ひっそりと気配を消してただ聞きたくないこの 『 』をただ黙って見てみぬ振りをする。
この牢獄から誰か連れ出してほしい。
私の手を引いて「大丈夫だよ。」って重い足を動かして。
ここではない何処かに。
けれど、そんな甘っちょろい事を言ってくれる人なんていない。
それにそんな甘い言葉とそんな人間もこの世の中にいたとしても、私の側にはいない。 だからいないのも当然だ。
私に対して投げかけられる言葉は陳腐でありきたりだ。
「もっと周りを見なさい。」「物事を広くとらえなさい。」「あんな人にはなってはいけないよ。」
じゃあ広い視野を手に入れるには、私の周りを見通す為に必要なものは何が必要か。
この世の中で息をしてひっそりとでも生きていくために必要なものを導く人は私にはいない。
無意識に呼吸を繰り返しては身体は血液を巡らせるために酸素を取り込む。息を止めても心臓は脈打ち苦しくなれば私は口や鼻から胸一杯に肺に酸素を送り込む。
ただここ居る人に私の存在を気付かせないように息をフーッと静かに吐き出す。
愛も恋の成れの果てがこんなものなら私には必要ない。
こちらから捨ててやる。
もうそろそろだ。耳障りな『 』は終わる。
ほら、これが成れの果てだよ。
強がって心のなかで呟いても私はこの扉の前から逃げ出すことも、開けることも出来ないまま。
前進も後退も出来ない私という存在は身体だけに成長して精神的にはこの時で止まり続けている。
ただ周りにさとられないように擬態をして日々を過ごす。
安定を望む私に現れるこの悪夢は私を苦しめる。
私は知ったか振りをする何も知らない幼稚な子供のままだ。
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