第7話

「あーよくねたわ」

 起きたのは昼過ぎ。昨日は宅呑みで自分の限界を突破してしまった。非常に喉が渇いている。

「あー起きた? まぁ、机の上に麦茶あるから、飲んどきな」

「あ、先輩すか。エヘヘどうもすんません」

 台所から顔を覗かせたのはバイト先の先輩。昨日はこの人のアパートでしたたかに呑んだ。

 冷蔵庫に常備してあると言う南蛮漬けは旨いし、おひたしも良い。何より先輩の緩急とオチのついた話芸が逸品だ。

 麦茶をコプコプ飲んでいると熱したフライパンに何かを投入した音と鼻先をくすぐる甘い香り。

「先輩、何か作ってるんですよね?」

「おう。朝昼をかねたパンケーキな」

 ちょっと興味が出てきたので台所を覗いてみる。

「あのー、二日酔いなんで生クリームとかはちょっと」

 フライパンにはキツネ色のパンケーキが二枚、多分アレが一人前。

「アホか。俺だってクリームとか食わねぇわなッ」

 両面がキツネ色になると白い皿にパンケーキを重ね盛り、先輩はそこへ小豆の缶詰をタタタッとかけまわした。

「残りは明日にでも冷やし汁粉にするか。 おぅ、持って行って喰え」

「うわー! ドラ焼きとも違うしなんかカワイイ! 女子の食べ物って感じ!」

「お前な……」

 食事中からコンコンと先輩に説教された。

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