第16話 キッチン

 喫茶室について確認したいことは色々あるけど、まずは床の掃除だ。

 今後料理はここのキッチンでするから、土足禁止にしたい。

 離れと同じように毎日掃除してもらえるとしても、ブーツを履いたまま喫茶室内を歩き回ってしまったし、元が土足の場所なので一度は自分で清潔な状態にしておかないと気になる。


 喫茶室のカウンターの奥には六畳間程の広さのスタッフルームがあって、掃除道具はそこに揃っていた。

 他にも、ハンガーラックに制服(白シャツと黒パンツ)とエプロン(モスグリーン)が各2着掛けられていて、靴(黒ぺたんこバレエシューズ)もあった。私のサイズだ。服と靴が増えて嬉しい。

 救急箱やノートパソコンも置いてある。この部屋は後日しっかり確認しよう。



 喫茶室の床掃除を終えて、離れの洗面所に置いていたクッキングヒーターや調理器具等は返却した。喫茶室にある物の方が品が良い。


 夕食は喫茶室のキッチンで自炊した。といっても、掃除で疲れたので作ったのは牡蠣の缶詰を使った手抜きパスタだ。こちらに来て初のパスタである。

 

 残念ながら喫茶室の冷蔵庫は空だったし、カウンターやシンクの下、戸棚などの収納スペースに食材や油、調味料等は無かった。すごくがっかりした。


 だが、引き戸があったので開けてみると、そこがパントリーだったのだ。


 ウォークインで広さは四畳くらい。中にはストックが詰まっていた。米やパスタ、小麦粉。コーヒー豆や紅茶、ココア、酒類。各種の油や調味料、スパイス。トマトやコーン、シーチキン等の缶詰。ラップやキッチンペーパー、洗剤等の消耗品、保存容器、調理家電 他。

 

(料理のレパートリーが増やせる!)

 大容量の物や詰替え用の品があるのも嬉しい。売店にあるのは容量が少ない商品ばかりなのだ。

 食器も増えたし、温泉宿での食事の質が上がりそう。



 離れのティーバッグのように、このパントリーの物も勝手に補充されるのだろうか?

 検証のため、スマホでパントリー全体の写真を撮ってから、缶詰を全てアイテムボックスに入れて棚の一部を空けた。

 明日どうなっているか、楽しみだ。



 夕食後は喫茶室のソファでまったりする。日が暮れたらバータイムだ。

 聴いたことがあるジャズピアノの曲を流し、飲んだことがない文学的な名前のカクテルを味わいながら、間接照明の明かりで異世界人アプリをチェックする。

 今回はスタッフルームにあったノートパソコンを使ってアプリを開いてみた。試しに電源を入れたら、ホーム画面に青いスライムがいたからね。


(消費MPが増えてるな)

 離れに加え喫茶室も維持することになったためか、MPが1時間あたり2%減と消費量が倍増している。

 MPが枯渇するほど温泉魔法を使ったことはないし、私専用MPポーション(宿の温泉水)もあるので問題はない。


(あれ? これ昼に見た時は無かったよね)

 画面に新たに並んだ『喫茶室』を開くと、『発注』というメニューがあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る