第10話 温泉魔法

(ま、魔法きた-‼)

 これはすぐ試したい! ニドゥ町で異世界初外食の予定だったが帰ろう!


 椅子に隠れるようにしてその場で『迎え』を使い、温泉宿に戻った。


 ◇◇◇


 作務衣と半纏に着替え、昼食を宿のお着き菓子のお饅頭で済ませて、庭(建物から半径50mの安全圏内を庭と呼んでいる)に出た。

 わくわくが止まらない。


 MPのゲージは現在94%。

 MPは、1時間に1%ずつ減る。おそらく、温泉宿の維持に一定量を使ってるんだと思う。

 MPで宿代を払っていて、温泉宿メニューの実行(送迎とか)は宿代に込み、って感じ。


 レベルが上がれば、自然回復量が宿代を上回って、減らなくなるかもしれない。まあ、私のステータス表示じゃレベルアップしたかわからないけども。

 ちなみに、睡眠1時間で10%回復、温泉に浸かると全回復だ。



 温泉魔法は水魔法のユニークバージョンだろう。まずは、ただの水(常温、中性)の球を手の平の上に出すイメージをしてみる。


「出た!」

 直径10㎝程の水の球が浮かんでいる。

 凄い! 人生初魔法!


 鑑定したら『水』と出た。飲めるのかな、と思ったら『飲用可』と表示されたので、口の前に移動させ少し吸う。無味の普通の水だ。


 温度を上げてみる。

(鑑定、温度表示入りで)

『水 40℃』

 指を入れてみた。温水だ。そこから徐々に温度を上げていくと沸騰しだし、蒸気になって消えた。


 それから、水の球の大きさや形を変えたり、消したりしてみた。

 霧にすることもできた。敵の視界を悪くするのに使えそう。

 水の球をどこまで大きくできるか、どこまで離れて出せるかは、後で開けた場所に移動して試そう。


 特に自分の魔力は感じられないが、魔法の発動はイメージすればいいようだ。


(水魔法の攻撃って、ウォーターボールとか? 小説の水魔法使いは何してたっけ?)


 領都ゴタルで商業ギルドに加入するまでは商いができないので、薬草を採取しながら攻撃魔法で魔物も狩って稼ぎたい。


 胸の前、腕の長さの距離を取って直径10㎝の水の球を出し、5m程先の木の幹を的にして当ててみる。


 ペシャ


(……水風船投げ?)


 しょぼい。

 気を取り直し、より強い攻撃をイメージして魔法を発動する。

 先程と同じ位置から、今度は勢いよく水が出た。強力水鉄砲って感じだ。


(うーん、牽制や嫌がらせにはなるだろうけど、これで魔物を倒すのは無理そう。いや、熱湯とか強酸にしたらいけるかも?)

 これも後で試そう。


(あとは…なんか水で切断する機械あるよね? ウォータージェットだっけ?)

 小さい穴から超高圧で出た水で切断するイメージで魔法を発動する。


(届いてないな)

 ウォータージェットの噴射口を、自分のそばから木のそばに変える。


 ドサァッ

 木が切れて倒れた。


(これいいじゃん! 岩とかにも試したい。…問題は動く的に当てられるかだけど)


 MPを確認する。83%だ。

 

 他に攻撃する方法は、水で窒息させるとかだろうか。『転移』で草原に移動していろいろ試してみよう。魔物は怖いけど、実践は必要だ。

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