第7話 ニドゥ町
村、町、領都を結ぶ道には、領主が魔物避けの何かを施しているそうだ。
イアン村のような小さな村への道は施す頻度が低く効果が弱いが、それでも道の外よりは安全である。
ちなみに村を囲んでいた柵にも同様の効果が付いているらしい。
ニドゥ町はイアン村の西。雨で休んだ日もあるので予定より遅れたが、村を出て5日目にしてニドゥ町が見えてきた。
町に入るのは明日にしよう。
HP高めの恩恵か、森での活動で鍛えられたのか、歩き続けても意外と平気だった。黙々と歩くのは心が無になって結構いい。お遍路さんってこんな感じなのかも。
でも公共交通機関も車もないなら、馬に乗れたらいいなと思う。風魔馬ならもっといい。
◇◇◇
温泉宿は
ベッドは二台もいらないし場所を取るので、一台返却した。
最初はアイテムボックスに入れようとしたのだが、アメニティなどの消耗品は入れられても、備品や貸し出し物品はアイテムボックスに入らなかった。これらは『温泉宿』メニューの中の『貸し出し』『返却』を使って出し入れしている。
冷蔵庫は、元から入っていた高額な飲み物を返却し、空にした。
ただ、アイテムボックスがあるのであまり使っていない。冷凍室で氷を作ったり、飲み物や果物を冷やすくらいだ。
キッチンはないので、洗面所のカウンターに卓上IHクッキングヒーターを置いて、そこで料理している。
洗面所は結構広く、カウンターのスペースも収納も余裕があり、換気もできるので問題はない。
今日の夕食の献立は、パックのごはん、缶詰の焼鳥、おつまみの干し貝柱で出汁を取ったスープだ。スープの具は山菜、キノコ、イアン村で購入したジャガイモ。味はまあまあ。
◇◇◇
「身分証を出して」
「持ってません」
「持ってない? ニドゥ町に来た目的は」
「行商です」
「商業ギルドに入ってないのか」
「実は記憶がなくて」
「別室で話を聞く」
ですよね。
ニドゥ町の門番に別室に連行された。一目で異国の出身とわかる人間が身分証を持ってないんじゃ仕方ない。イアン村がゆるかっただけだ。
今日の格好は、ワンピースの上に半纏、足には長靴。ボブの髪を隠すため、ストールを頭から首に巻いている。
バッグとその中身はイアン村の時と同じ。
記憶はないが所持品からして自分は行商人だと思う、と門番に主張し、門番から所持品チェックを受け、入町税2万ゼニーを払って町に入った。
あっという間にゼニーが…。
門番に尋ねたところ、ニドゥ町に商業ギルドは無いらしい。最も近くて領都ゴタルで、ニドゥ町からは間に二つ町があるが、どちらも小さな町とのこと。
商業ギルドに入らずに商いをすることは禁じられた。
この町で身分証とゼニーを手に入れるには、冒険者ギルドに入るしかない。
冒険者というのは、魔物の討伐や素材の採取、雑用をする何でも屋みたいな職業で、その仕事の仲介をするのが冒険者ギルドという組織らしい。
私でも薬草の納品くらいはできそうだ。
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