第22話 捜索4

 次に訪れたのは、正雲寺だった。

 第3の被害者が、僕を隠し撮りしていた場所だ。桜宮さんによると、被害者は、ここら辺で何回も隠し撮りをしていたとのこと。その主婦と僕。どんな接点があるんだろうか。

 僕らは社務所を訪れると、いつも仕出しでお世話になっている、住職の息子さんが出迎えてくれた。


 「よくきたね、成人君。そちらの方たちは?」

 息子さん、と言っても、住職はおじいさんで、息子さんにはもう大学を卒業した子供さんもいる。いつも穏やかに微笑むその人は、ひそかに僕の目標だったりする。


 「こういう者です。」

 僕が答える前に、桜宮さんが名刺を出す。そして今までと同じように、僕のために働いている、と言うと、息子さんは嬉しそうに笑った。

 「彼によくしてくれる方がいて、よかったです。どうぞ、末永く彼と友人でいてください。」

 何故か、倫久に頭を下げる。

 できるだけ、彼から逃げだそう、と考えてる僕は、なんか申し訳なくなってしまった。

 「ところで、この方はご存じですか。」

 桜宮さんは、第3の被害者の写真を出した。

 「はい、入川さんですね。」

 「入川さん?」

 「今騒動の殺人事件の被害に遭った方です。本当にお気の毒に。」

 「面識はおありで。」

 「はい。園児の母親です。」

 「園児?」

 「寺の横に幼稚園があるのはご存じですか。息子さんが、そこに通っております。」

 「幼稚園ですか。」

 「はい、私どもの寺が経営する幼稚園です。」

 「なるほど。ところで、この男にお心当たりは?」

 「この方は・・・確か、入川さんが亡くなった日にあった法事の時でしたか、幼稚園の前に車を止めていたので、注意した方に似ております。寺の者が気づいて、どうも、じっと宴会場の方を見ていたので不審に思った、と申しておりました。あからさまに、何を見ている、とも言えず、場所が場所だけに幼稚園の邪魔になるからと、移動して戴いたのですが・・・」

 「そうですか。いろいろと教えていただきありがとうございます。」


 「あの、もし、必要でしたら・・・」

 僕たちが席を立とうとした時、息子さんはためらうように、そう言った。

 「はい?」

 「幼稚園の防犯カメラの映像をお貸ししましょうか。」

 「防犯カメラ、ですか。」

 「はい。不審者対策に門に向けて防犯カメラを設置しております。あの後、実は見たのですが、その不審者の車が写っていまして、男が車を出ている場面もあります。その・・・成人君が気にするといけないと思っていたので言わなかったのですが、その男、寿司政さんの搬入の様子をうかがっているようで。いえ、正確には成人君を見ているような気がしたものですから・・・」

 僕らは顔を見合わせた。

 そして桜宮さんが「是非」と言って、防犯カメラSDカードを預かったんだ。 

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