第4話

警察に連絡したことでほっとした。

 あとは警察が到着するのを待てばいい。

 トイレに行こうと、食堂をでた。

 そのあと自分の部屋に向かった。

 歩き回って汗をかいたので、着替えたかった。

 部屋で着替えを済ました。

 そこでもう1度冷静に考えてみた。

 本当に高山が犯人なのだろうか?

 増田氏と高山は、昨日が初対面だ。

 だとして、一体増田氏を殺害する理由はなんなのだろうか?

 分からないことが多すぎる。

 情報が欲しかった。

 僕はもう一度、高山の部屋に入って調べてみることにした。

 何か見落としているところがあるかもしれない。

 僕は部屋をあちこち探しまわった。

「あっ、痛っ」

 サイドテーブルに足をひっかけた。

「ん……?これは……」

 裏に何か落ちている。

 これは……。

 スマホだ。

 高山のスマホだろうか?

 僕はスマホを拾った。

 何か分かるかもしれないと期待した。

 しかし画面はロックされたままだった。

「なんだ……」

 がっかりした。

 その時、背後に刺すような視線を感じた。

 僕は振り返った。

「なにしてるの?」

 部屋の外に立っていたのは、大塚だった。

 大塚の表情は険しかった。

「なかなか戻ってこないから、見にきたのよ」

「なんだ。驚かせないでくれよ」

 僕は手にしたスマホを見せた。

「これ。スマホが落ちてたんだ。高山のだと思うんだけど」

「中見たの?」

「いや。ロックがかかって中は見れなかったよ。何か手がかりがあるんじゃないかと思ったんだけどさ」 

「そう。ねえ、怖いから1人にしないでよ。まだ高山君もどこかにいるかもしれないし」

「あ、ああ。ごめんごめん」


 僕らは食堂に戻った。

 そしてじっと警察が来るのを待つことにした。

 クラシックな大きな時計だけが、正確に時を刻み続けている。

 10分程、会話もなく過ぎた。

 僕は何気なく大塚の服を見た。

 室内の明かりでさっきよりも服がよく見える。

 スウェットの隅に、何か染みのようなものが見えた。

 いや染みじゃない。

 あれは……。

 血だ。

 さっき書斎でついたのか…?

 いや。大塚は増田氏の遺体には近づいていない。

 ならどうしてそんなところに血が……。

 血がついたとすれば、それは事件に関わっているからだ。

 僕にはそこで1つの考えが浮かんだ。

 犯人は……。

 犯人は大塚なのではないだろうか?

 それなら、この一連の奇妙な事柄にも一応の説明がつく。

 増田氏と高山と大塚。

 3人の間で何らかのトラブルがあった。

 そして増田氏は殺され、高山は行方不明。

 だから警察を呼ぶのをためらった。

 となるとさっき本当に警察を呼んだか、怪しい。

 だとすると、僕自身の身も危険だ。

 事件を知っているのは僕だけ。

 もしかして僕が……最後の1人ということか?

 そこまで考えたところで、急激に眠くなった。 

「う……!?」

 さっき飲んだアイスコーヒーか?

 うかつだった。

 だめだ。

 いま眠ってしまうのはまずい。

 なんとか起きていないと……。

「いいのよ寝てて。警察が来るまで、私起きてるから」

 笑顔だった。

 大塚の口元は笑っていない……ように見えた。

 その胸元には、大塚が廊下で魅入っていた金のネックレスが光っていた。

 

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犯人は 空木トウマ @TOMA_U

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