第四十四話 死神と堕天使
それはあまりにもあっけない、一瞬の出来事だった。
ベルリオが動き出したのを見て、海賊の男は銃を取り出して構える。右手で狙いを定め用としているところに、想像以上に早かったベルリオが接近して、その右腕を切り落としてしまう。
海賊の男はすかさず左手で別の銃を取り出すのだが、その左手すらも狙いを定める前に切り落とされてしまった。両腕を失った男の胸を刃が躊躇うことなく貫いた。
「え、あ・・・た、助け・・・」
両腕を失い、胸を貫かれた海賊の男。戦う術を失い、命乞いをするように助けを求めるのだが、その願いが叶うことはなかった。
「立場が変わった途端の命乞い・・・聞いてもらえると思っているのか?」
海賊の男の表情が恐怖に歪んだ瞬間、ガンブレードから銃声が鳴り響く。胸を貫いて尚弾丸を発射。その弾丸によって海賊の男は後方へ吹っ飛ばされ、地面に倒れ込んで息絶えた。
戦って人を殺すことに一切の躊躇がなく恐ろしい。しかし戦いの際の動きのあまりのスムーズさには一転して芸術性を感じさせる。そんな一瞬だった。
「さて、今の銃声で敵がわらわら寄ってくるだろう。向こうの斜面の上ならまだ大丈夫だろう。みんなはそっちに避難しておいた方が良い」
港とは反対側になる山手側。海賊が海から来るのであれば確かに山の方は安全だろう。
「俺達は仕事に行ってくる。みんなと、荷物を頼む」
「あ、あぁ・・・」
ベルリオのずっしりと重い荷物を預かる。この重さを持ったままあのパフォーマンスが発揮できたとはにわかに信じられなかった。
「モニカも行くの?」
「当然」
子供が友達の心配をしている。だがそんな心配の声にも、モニカは表情一つ変えない。
「心配しなくていい」
ベルリオが子供を安心させようと優しく頭を撫でる。
「俺達は奈落じゃ死神と堕天使で通っている。夜明けまで待たせない」
夜明けまで待たせない。つまり夜の間に海賊を全て片付けてくるという自信の表れか。過信と思いもしたが、先ほどの動きを目の前で見せられてしまえば異を唱える者などいない。
「さてモニカ。好きにしていいが、洗濯は自分でしろよ」
「嫌」
「お前の白い服に返り血が付くと洗うの面倒なんだぞ」
「じゃあ汚れたままでいい」
「何もしないならいいけどな、返り血だらけでバイクに乗ろうとしたりするからダメだ」
「えー・・・面倒・・・」
表情にこそ出てはいないが、モニカはあからさまに嫌そうな態度を取っていた。
「じゃあ返り血には気をつけろ」
「それも面倒・・・」
この会話がまるで彼らの日常だというかのように、軽快な受け答えがなされている。その会話と共に港方面へと足を進めていく二人。今までに見たことのない様子に、非常事態だというのにしばらく呆然と見送ることしかできなかった。
「か、変わった二人だな」
「そ、そうね」
預かった荷物を抱え、島民と自分たちの安全のために島の山手側へと移動を始めた。
港の方で響いた銃声が山の方にまで聞こえてきた。
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