設定とか構想段階のシチュ「タバコの煙は薄く燻る」

「先輩ってタバコ吸わないんすか?」

「ああ、昔から肺が弱くてさ。吸えないんだよね」

「えーもったいないっすね。似合いそうなのに」

「俺も憧れてた時期はあったよ」

「…吸うとどうなるんすか?」

「……咽せる」

キョトンとした後失笑する後輩女子

「誰だって最初はそうだし」


ツボにハマったのかしばらく笑い続ける後輩。

愉快そうで何よりと微笑ましく見守っていたのはほんの数秒で流石に笑われすぎてムッとしてきた。


目に涙を浮かべた後輩が咥えていたタバコを差し出して息も絶え絶えに言う

「ちょっと咥えてみてくださいよ」


「いや、タバコ本当にダメなんだって…」

「咥えるだけ!咥えるだけっすよ。あと写真撮らせてください」

絶対似合いますから、とスマホを取り出す後輩。


写真はやめろ、とタバコを受け取り吸い込まないようにしながら咥えてみる。昔はこんなのに憧れてたな、とか郷愁に浸りかける


「先輩、ちょーかっこいいですね」

「なっ!?」

思わず思い切り息を吸い込んでしまった。ガハゴホと咳き込む俺に、なにやってんすかと呆れた様子で背中を摩りにくる後輩。珍しい褒め言葉にここまで破壊力があるなんて反則だ…


「ダセェwww」

直後ポロリと溢れた後輩の一言。こいつ殴りたい


「なんでおまえこんなキツいの吸ってんの?」

言いながらタバコを突き返す。もう2度と吸わん。肺が痛くて涙が出てくる。

「あー、なんというか…成り行きですかね…」

説明に窮した様子で後輩の歯切れは悪い


昔の男、だろうか。という邪推が脳裏を掠め、くだらない詮索はやめろと一笑に伏す



別にこの後輩が過去にどんな男と何をやっていようが、俺には関係ない事だ。

「もう戻るぞ」

「あ、自分もう少し吸っていくっス」

「ほどほどにな」

嫌な妄想のせいで顔を見るのが少し気まずい。そんな気がして俺はそそくさと退散する。仕事にかこつけて逃げた、と解釈も出来そうだ


ーーーーー


先輩が去った後、後輩は突き返されたタバコをしばらく指先で弄んでいた


「間接キス…」

先輩はなんの躊躇いもなくタバコを受け取り、咥えて見せた。嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感覚の反面、自分はやっぱり女として見られてないんだろうかと不安になる


「今更、なにを…」


女らしくないなんて事はとうの昔にわかりきっていたこと。割り切っていたこと。


とはいえ、意識されてない事がこんなに虚しい事なのかと薄く立ち登る煙を目で追いながら思う。捨てたはずのものが、今更になって欲しくなる。さもしいなぁと口に運びかけたタバコを、思い直して灰皿に突っ込んだ




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