第10話 夏休み前⑨

「ところでUFOはどうなんですか?」


「そうだなぁ、未確認飛行物体……UFOは言わずもがな未知の宝庫だ。そのテクノロジーや地球外生命体の存在だけを取っても興味は尽きない…」



しかし、と先輩は続ける。


「我々はすでに去年、その存在が『有る』ことを観測により証明している。未知との第一種、第二種接近遭遇も時間の問題だろう」


ふふん、と得意げに慎ましい胸をはってみせる。




そう。

去年の夏、僕と先輩は夜空の向こうに無数の光を見た。


幾重もの光線。不規則な軌道。真夏の湿気を帯びた風。……先輩の汗ばんだ身体と甘ったるい匂い………


ふいに去年の夏の思い出が蘇り、ほんのり顔が熱くなるのを感じる。

健全に育ってきた高校生の自分にほ色々と…刺激的な経験だった。


はっと、我に返り先輩を見るとジトッとした目でこちらを見ていた。

不機嫌そうに眉をひそめているが、何故か頬が少し上気している。


「今、ふしだらなこと考えてたろ」


「か、考えてませんよ。ほら先輩!パソコン空きましたよ」


何故かこういうことにだけ勘が鋭い。


どうにか先輩の気を逸らさねばと考えた矢先、

いいタイミングで前の生徒がパソコンを使い終わったので、先輩を誘導する。




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