第6話 夏休み前⑤

「海士クンか、問題ない。なぜなら…」



先輩は得意げに胸を反らす。


「私は、将来ミステリー研究家となる身だからな」


そしてコホンと咳払いし、眼鏡をくいと押し上げた。


「そんな私にとって、職能考査など単なる通過点に過ぎないのだよ」


堂々と言ってのける。決まったとばかりのドヤ顔だ。


海士も呆気に取られている。


「……なぁ、ミステリー研究家って職能等級どれくらいだ?」


「僕に聞かないでよ…」


こそこそ海士と話していると、先輩はくるっと階段の方に向き直った。


「今日は夏休み前最後の登校日だから、私は特定購入申請書の提出に行く。明屋後輩、我々の予定はそこで詰めようじゃないか」



それでは、と言い先輩は階段を降りていった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る