第2話 夏休み前①

はっ、と周りを見渡す。


いつもの教室、いつもの机。そして黒板の前で喋る教師。

どうやらHR中に居眠りをしてしまっていたようだ。


学期末試験も終わり、学校中は何となく緩んだ雰囲気に包まれている。


明屋一樹(あけや かずき)はこの雰囲気が嫌いではない。

解放感と、これから来る夏休みへの展望と期待。


喜々とした同級生の表情につられ明屋は頬を緩ませ、すっかり夏模様となった空を見上げた。



「ーーー夏季休暇に向けた諸注意は以上だ。」


担任教師の声も、こうも緩んだ雰囲気の中ではおそらく生徒に届いてないだろう。

それを感じ取ったのか、担任は言葉を付け足す。


「……あー、諸君らも重々承知とは思うが、来年は職能考査がある。遊ぶ余裕などないからな、それを肝に命じてこの夏休みを過ごすように」


では、と言い教室から出ていった。


言い方に嫌味はあるが、つまりこの高校ニ年の夏はそれほどまでに貴重なのだ。


職能考査までの自由意志の効く最後の夏休みーーーー

悔いの残らないものにしたい。


明屋は改めて決意を新たにした。



……とは言うものの



「やること、特にないんだよなぁ、、」



例年と同じく、特別新しい用事も予定も無い。

取り立てて代わり映えのしない夏休みが明屋に迫っていた。











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