第26話 フリスビー

※※※お知らせ※※※

いつもご愛読いただきましてありがとうございます!

更新頻度が不定期になっておりますが

今後は平日投稿(できるだけ)、休日投稿は無し、とメリハリつけた流れで投稿していこうと思います。

週4~5本、22時過ぎ目安で投稿できるように頑張りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

※Twitter(@8282create1)でも更新お知らせしていますので良かったらフォローお待ちしております(笑)

※※※※※※※※※※




 カケルは困った人を見ると見過ごすことができない性格だった。


 困った人を見過ごせない性格は、幼少期の頃にマミに助けてもらってからである。

 人を助けること、助けられることでどれだけ気持ちが救われるか、素晴らしさに気づいたことから後発的に生まれたものであった。


 そんなカケルに根付いた性格は、一番近くで見ていたマミ、小学生から遊んでいたルカ、ユキ、全員が知っており、全員そんな優しいカケルの性格が好きだったのだ。



 ――マミは群れの間に入っていくカケルを見ながら、自分も割って入っていくべきか葛藤していた。


(え!? あのシカの群れの真ん中にいるの、ルカなの!? ルカ、何やってんの……。 てか、カケルがルカのところ割って入っていっちゃったし。ううう、カケルはルカの方に行かないでほしい、けどルカは困ってるし、どうすれば……)


 自分も一緒にカケルと同じく追って行きたいが、シカが大群すぎて、なかなか近寄れない。マミは集合体恐怖症でもあった。



 どうすることもできず、マミはもどかしい気持ちのままシカの大群の先を見つめていると、程なくして、群れの中心からピュンッ、ピュンッ、と何かが飛んでいくのが見えた。


 よく見ると、フリスビーのように宙を舞って、シカせんべいが何枚も何枚も遠くへ投げ飛ばされていた。


 

 フリスビー然りシカせんべいがピュンピュンと飛ばされていくと、群れをなしていたシカたちは、我先にと一斉に動き出した。


 群れが一斉に移動すると、残された群れの中心にはルカとカケルが立っていた。



 マミたち一同は「大丈夫!?」と言いながら近寄ると、ルカは「怖かったあぁぁぁ!!!」と言いながら、見せつけるかのようにカケルの腕にくっついてグスグスと泣き始めた。


(あーーーっ!!! ルカ、どさくさに紛れてカケルにくっついてる! ぐぬぬぬ、引っ剥がしたい……!)


 マミは歯を噛み締めながらその様子を睨みつけていると、ユキが駆け寄って「ルカ、大丈夫!? どうしたの!?」とルカに近づいて声をかける。


 そしてカケルにくっついていた身体を剥がし、ルカをユキの胸に抱き寄せた。


(ユキ、ナイス! さり気なくカケルを引き剥がした! ……多分ユキも同じ気持ちで、ルカの行動に嫉妬してたんだろうなぁ)



 ルカはユキの強引な抱きこみに少し驚き、ほんの僅かに残念そうな顔を残すも、ユキにもたれかけた。


「うぅ、怖かったよぉ。……あのね、ワタシね、シカさんとたくさん仲良くなりたかったから、沢山おせんべいを買ったの。でね、クラスのみんながいるところに戻ろうと思ったら、みんなとはぐれちゃって。どこかなって探してたら、知らない間にシカさんたちが沢山集まってきちゃってたの。それでね、シカさんたち、お腹すいてるのかなって思って、おせんべいを袋から出したら、もっといっぱい集まってきちゃって、囲まれちゃって……。もうね、怖くて、誰か助けてほしい! と思って叫んでたら、カケルくんが入ってきて、助けてくれたの。……カケルくん、ホントありがとう!」


 ルカはつらつらと事情を話すと、抱かれているユキの腕のなかをぐいっと抜け出し、カケルの手をとり、うるうるした目でカケルを見つめた。


「べ、別にそこまで感謝されなくても……。まぁ、とりあえず怪我とかしないで助かって、良かったな」


 カケルは照れくさそうに笑った。



その一部始終を睨みつけて見ていたマミは、更に奥歯を噛み締めた。


(ぐぬぬぬぬぬぬ!!! ルカ、絶対にわざとだ、確信犯だ! いつも取り巻きがいる人気者のルカが、クラスの人たちとはぐれるはずがないもん! カケルのことを探すためにわざと一人になったでしょ!)


 マミは勝手に憶測をたてる。


(カケルたちを見つけて、わざと近くでシカを集めて、カケルに助けてもらうこと前提でやってるよ、絶対計算してやってるよあの感じ! ルカは人だろうがシカだろうが動物なら何でも手懐けるし、前一緒に動物園に行ったときも、羊の大群に囲まれても平気な顔してたし! やっぱりルカは一番危ない、あの小悪魔の動きはずっと気にしておかなくちゃ……!)


 憶測にも度が過ぎているかもしれないが、マミはひたすら嫉妬心に駆られた。



 ユキもどさくさに紛れて、ルカが握ったカケルの手から更に自分の手で覆い、カケルを見つめ「カケルくん、すごい……」とキラキラ目を輝かせている。



 カケルを争奪する恋の戦いは激化しているのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る