第15話 プール1

勉強会から数日が過ぎた。


俺達は何とか期末試験を乗り越え、部員全員でプールに来ていた。


水着に着替えるため、俺と傑は更衣室に向かう。


「なあ海斗、お前最近なんかあったのか?」


「何かって?」


「水森と神風だよ」


「あ~、まあ俺がってより、あの二人が何かあったみたいなんだよな」


「そういえば水森と神風、最近仲良くなった気がするよな」


「仲良くなった気はするけど、時々バチバチしてるんだよな~」


「そうか?俺はそんな風に見えないけど」


俺は最近の二人の様子を思い浮かべる。





ある日の出来事。


俺達は部室でお昼を食べており、部室には俺と遥と雫の三人がいた。


「海斗、私のお弁当のおかずとそっちのおかず交換しよ」


「何と交換する?」


「海斗のウィンナーと私のから揚げでどう?」


遥は俺のおかずと自分のおかずを、箸で指す。


「いいぞ」


「そしたら、」


俺の方を向き、目を閉じて口を開ける遥。


「あ~」


「まさか、食べさせろと?」


遥はチラッと片目で俺を見た後、また目をつぶり食べさせてと無言で要求してきた。


しょうがないので、俺は自分のお箸でウィンナーを一つとり遥の口に運ぶ。


ぱっく。


俺のウィンナーを食べたのは、遥では無かった。


「あー、雫ちゃん!それ私のウィンナー!!」


俺のウィンナーは、遥の口に運ぶ途中で雫に食べられた。


雫はもぐもぐと口を動かし、ウィンナーを飲み込む。


「おいしかった」


「もーお、雫ちゃんのバカ―」


結局この一見は、雫が自分のおかずを遥にあげる形で解決した。





さらに、ある日の事。


遥と雫が俺の家に遊びに来た時の出来事。


俺達は家庭用ゲーム機のレースゲームで遊んでいた。


俺と遥はある程度そのゲームをやり慣れていたため、難なくマシーンを操作出来ていたが、雫はその日初めてレースゲームをプレイしたらしく、操作に苦戦していた。


頑張ってコントローラーを操作していた雫だったが、結局上手くいかずにしょぼくれて、しゅんとしてしまう。


これでは雫がかわいそうだと思い、俺は彼女に操作を教えることにした。


「このボタンをここで押して、スティックを少し倒してみて」


「こう?」


画面に映っていたマシーンが逆走してしまう。


口頭での操作の説明は、案外難しくうまくいかなかった。


俺はもっと簡単な方法がないかと考え、ある事を思いつく。


「雫、ちょっといいか?」


俺はコントローラー持っていた雫の手を握る。


手を伝い雫が一瞬ビックとしたのが分かった。


「口頭で説明するよりこっちの方がやりやすいと思ったんだが、雫は嫌だった?」


「大丈夫・・・」


「じゃあ、一度これでやってみよう」


雫は恥ずかしそうに顔を赤らめていたが、ゲームをもっと楽しんでもらうために俺は続けた。


「俺が動かしてみるから、少し力ぬいて」


「うん」


俺は彼女の手を握る形でコントローラーを操作した。


結果から言うと、この方法はうまくいった。


やはり、口頭で伝えるよりも直接動かす方が断然やりやすかった。


レースを終えて、俺は雫が上達したかどうか確かめるため彼女の手を離す。


しかし、雫は俺の袖をつまむように引っ張ってきた。


「もう一回お願いしたい。・・・・ダメかな?」


雫の上目遣いでのお願いに、俺は少しドキッとしてしまう。


雫にお願いされたので、俺はもう一度彼女の手を握ろうとした。


しかし、俺が握る前に遥が先に雫の手を握っていた。


「私が教えてあげる」


「私は海斗君にお願いしたんだけど」


「教えるならどっちも一緒でしょ」


結局、二人はバチバチに言い争いながらも、楽しそうにゲームを遊んでいた。





そんなことを思い出しながら、俺は服を脱ぎ水着に着替えた。


水着に着替え終えた俺は、荷物と脱いだ服をロッカーにしまう。


横で着替えていた傑もちょうど着替え終えたみたいだ。


そして、俺達は皆の居るプールへと向かった。


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