第13話 私と神風さん

私は今お悩み解決部に所属しており、数日が経った。


私はいま現在、一部員として生徒のお悩みを解決をしている。


ただ、時々相談される中に答えずらいお悩みもあった。


そしていま現在私はその答えずらいお悩みに対面している。


「先輩、告白した方がいいですか?」


私の目の前には後輩の由香ちゃんという女の子が座っていて、いま私は恋の相談を受けていた。


「つまり最近仲良くなった男の子がいて、その子といい感じの関係になって、いま告白するかどうか迷ってるていうわけね」


「はい!」


この子は多分、誰かの一押しが欲しいのだろう。


先輩としてここはビシッと言った方がいいよね。


「それは、こ、こ、こ、・・・・・・」


「こ?」


「告白した方がいい」って言おうとして言葉に詰まる。


なぜならば、いま部室には部員が私と海斗しかいなくて、私の傍には他の生徒からの相談を受けている海斗がいて、そんな状況で告白という単語を言い出せなかったから。


数日前、私は海斗に告白した。


その時は色々あってごまかしたけど、私にとって海斗への告白は勇気を振り絞った行動で、だから告白という単語を出すとつい意識してしまう。


海斗の事を・・・。


特に海斗が近くに居る今の状況は余計に。


私は一旦立ち上がり、海斗に近づく。


「どうしたの水森さん?」


「ちょっと来て」


私は海斗の腕を掴み部室の外に連れ出す。


「?」


海斗は状況が分からないのか、はてなマークを浮かべている。


「ここで待ってて!」


「どういう・・・・」


バンッ!!

言い終える前に私はドアを閉めロックする。


海斗の所に相談しに来た生徒には悪いけど、少しだけ待ってもらうことにした。


「これでよしと」


「いいんですか先輩?」


「いいのいいの」


「はあー」


「それはさておき、さっきの続きだけど私は告白した方がいいと思う」


私は彼女の目をしっかりと見て話す。


「やっぱりそうですか?」


「由香ちゃんが本当にその人の事を好きなら、絶対に告白した方がいいと思う。じゃないと後悔するから」


「なんか、先輩の言葉って重みがありますね」


「え?そ、そう?」


「はい!」


「まあとにかく由香ちゃんなら大丈夫!可愛いんだから自信もって!!」


「わかりました!」


これで一様は解決かな?


由香ちゃんはドアのロックを外し部室を後にする。


ドアが開き、さっきまで私が締め出していた海斗が中に入って来る。


「終わった?」


「うん」


「結局、俺は何で締め出されたんだ?」


「ないしょ」


私はクルッと回り、海斗に背を向ける。


私はそれ以上何も言わなかった。


海斗は結局分からずじまいのまま、お悩み相談に戻る。






色々なお悩みを解決し、気づくと時間が経ち日が落ち始めていた。


「今日はもう遅いし終わりにしようか」


「そうだね」


私と海斗は荷物をまとめ、部室を出る。


部室の鍵を閉め、私たちは鍵を戻しに職員室に向かう。


その途中私はある人物を見つけ足を止める。


「海斗先に行ってて」


「何か忘れものでもした?」


「まあ、そんな感じかな」


「それだったら、俺もついて行くよ」


「うんん、私だけで行かせて」


「・・・わかった」


私と海斗は職員室に向かう途中の廊下で別れた。


そして、そのすぐ横にある教室の扉を開け、私はその人物に近づき話しかける。


「こんばんわ、神風さん」


「水森さん・・・」


神風さんは動かしていたペンを止め、そっと顔を上げる。


「何書いてるの?」


「このまえ部室にやって来た生徒に頼まれていた、自作の小説の感想文を書いていました」


「そうなんだ」


神風さんは書いていたノートを閉じ、それをカバンにしまう。


「今日はなんで部活に来なかったの?」


「部室に居たら集中して読めないと思ったので、この教室で読んでました」


「そっか・・・」


教室には神風さんしかいなくて、物静かな空間となっていた。


私は神風さんの隣の椅子に座る。


そして、言いたかった事を神風さんに伝える。


「私さ別れたんだ」


「・・・・」


神風さんは眉一つ動かさなかった。


てっきり驚くと思っていた。


私が神風さんに会いに来たのはこのことを伝えるためだ。


あまり二人きりになる時間が無かったので、教室に一人でいる神風さんを見て今がチャンスだと思った。


「神風さんは海斗の事どう思ってるの?」


「優しい人だと思っています」


「異性としては?」


答えは分かっていたが、あえて神風さんにその質問を投げかけた。


「・・・・たぶん、好きです」


予想通りの答えが返ってくる。


私も今の気持ちを神風さんに伝える。


「私も海斗が好き」


「そうなんですね」


「驚かないの?」


「見ていればわかります」


「え、うそ?ほんとうに?」


「バレバレです」


私の反応が面白かったのか、神風さんはクスリと笑う。


それにつられて私もクスリと笑う。


そして、お互い腹を抱えて大笑いした。


「水森さん少し変わりましたね」


「そう?」


私は目じりに溜まった涙を指で払う。


「はい、以前は何かに悩んでいるみたいでした。でも、今は迷いが無くなった気がします」


そこまでわかっちゃうのか。


改めて神風さんの観察力に感心する。


「私さ昔の海斗しか見ていなかった。でもこの前、海斗に会った時に気づいたの。私が海斗を好きなのは幼馴染だからじゃない、優しくてかっこよくて傍にいて落ち着く、そんな存在だから好きなんだって」


そして、続ける。


「私はもうこの気持ちを諦めたくないし嘘もつきたくない。だから・・・お互い頑張ろ」


「お互い?」


「うん。私、海斗が好きだけど神風さんの事も大好きだから」


神風さんは私の目を見つめる。


「私も水森さんのこと好きですよ」


「ほんとに?」


「はい」


私は神風さんに思いっきり抱き着く。


急に抱き着かれビクッと驚く神風さん。


「雫ちゃんかわいすぎ」


「しずくちゃん・・・・」


「ずっと名前で呼びたいと思ってたの。ダメかな?」


「・・・大丈夫です」


雫ちゃんは、私の背中にそっと腕を回す。


「雫ちゃんにも私の名前呼んで欲しい」


「・・・・遥ちゃん」


「うん」


お互いにもう一度ギュッと抱きしめる。


「お互い恨みっこなしだからね」


「・・・うん」


こうして、私たちはお互いの気持ちを打ち明けた。


これでようやく私は迷いなくやれる。


私にとって今日の告白は雫ちゃんへの宣戦布告なのだから。

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