番外編
番外編 空と雫
これは神風 雫がまだ一年生の頃の物語。
日曜日の朝、学校は今日お休みだ。
予定もないから私はお家のソファーでゴロゴロしていた。
皆は休日お友達とお外にお出かけしているのかな?
お友達と呼べる相手が居ない私は、今週も家で一人だらだらしていた。
「雫、わたし洋服買いに行こうと思うんだけど一緒に行かない?」
ダラダラしている所にお姉ちゃんがやって来た。
「行きたい」
やることもなく暇だったのでお姉ちゃんと一緒に出掛けることにした。
ショッピングモールにやって来た。
ここのショッピングモールは家から少し離れているが服の品ぞろえがいい。
私たちはとりあえず目に入った可愛いお洋服が並んでいるお店に入ってみる。
「学校はどう?少しは慣れてきた?」
一緒に洋服を見ていたら急にそんなことを聞かれた。
「まあまあかな」
お姉ちゃんは休日いつも家にいる私を心配しているのだろう。
私は学校ではいつも一人でいるが、入学時からだいぶ時間が経ち仲良しグループとかはほとんど出来上がってしまい今更会話に混ざれる雰囲気でもない。
それに、最初の頃に話していた人達はお姉ちゃんのことばっかり聞いてきて正直ウンザリしていた。
みんな私じゃなくてお姉ちゃんと仲良くなりたいみたい。
特に男子達はしつこいぐらい毎日お姉ちゃんについて聞いてきたので「話しかけるのを辞めて欲しい」と直接言ったら、神風さんは感じが悪いという評判が広まってしまった。
後悔はしたけど、あの時どうすればよかったのかなんて分からない。
その後もお姉ちゃんとお話しながら色々洋服を見て回った。
「雫その服似合ってるよ」
「ほんとに?」
「うん」
お姉ちゃんに勧められたのはグレーに近い青色のレースボウタイワンピースだった。
胸の上あたりから手首にかけて少し透けているようなデザインで、服の上からでも少し肌が見える感じだ。
胸辺りにリボンがついていて可愛いと思った。
「一回着てみたら?」
私は試着室に行きそのワンピースを試着してみた。
「どうかな?」
「サイズもぴったりだし、すごく似合ってるよ雫。元から可愛い雫がもっと可愛くなっちゃった」
「ほめすぎだよ・・・」
他のお客さんや店員さんが居る前で褒められたので、恥ずかしくなり急いでカーテンを閉める。
試着した服を脱ぎ着て来た服に着替える。
ふと値段が気になり値札を確認してみると七千円と書かれていた。
私は試着室から出ると畳んだワンピースを店員さんに返す。
今の私の所持金は五千円ほどしかなく買えるような金額ではなかった。
「私が雫を誘ったんだしそのワンピース買ってあげるよ」
お姉ちゃんは私が店員さんに返したワンピースをもう一度受け取る。
「え?いいよ。また機会があったら自分で買うから」
「いいから」
お姉ちゃんはそのままレジまで行きワンピースを購入した。
「はい雫」
洋服の入った紙袋を受け取る。
「ごめんねお姉ちゃん」
「違うでしょ。こういう時言って欲しい言葉があるんだけどな~」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「うん」
私たちはその後も、洋服や靴などを見て回った。
色々なお店を回ったが、結局お姉ちゃんは洋服を買わずに、その日はショッピングモールを後にした。
帰り道の途中、お姉ちゃんが少しコンビニに寄りたいと言うのでコンビニの外で買い物が終わるのを待った。
そこに、白い猫が通りかかった。
「にゃ~ん」
猫ちゃんの真似をして話しかけてみる。
すると、猫ちゃんがこちらの方を振り向いた。
ジーと2秒ぐらい猫ちゃんと見つめあったが、興味を失ったのか猫ちゃんはすぐにそっぽを向く。
ゆらゆら揺れている尻尾を見て、どこに向かうのかちょっと気になったので少し追いかけてみることにする。
猫ちゃんの後を追いかけしばらく歩いてみたら公園に行き着いた。
日曜日だけど今日はどうやら公園に人が居ないみたいだ。
猫ちゃんはベンチの方に向かうと、ぴょんとジャンプをしベンチの上で丸まって動かなくなった。
私もベンチに近づく。
どうやら猫ちゃんは寝ているみたいだ。
私はそっとベンチに座る。
撫でたら起きちゃうかな?
そっと猫ちゃんを撫でてみる。
猫ちゃんは気持ちよさそうに寝ている。
「ここの公園なつかしいな」
最後に訪れたのは小学生の頃だろうか。
久々に訪れた公園は少しデザインが変わっていて時の流れを感じた。
静かな公園。
心地いい風と暖かい日の光が眠気を誘う。
「ここにいたんだね雫」
「・・・お姉ちゃん?」
いつの間にか寝ていたみたいだ。
「ここ懐かしいよね」
「うん」
「昔はよく一緒に遊びに来てたね」
「ブランコによく一緒に乗ってたよね」
「そうだったね」
お姉ちゃんは私の隣に座る。
「あれ猫ちゃんは?」
「ねこ?」
「ううん、なんでもない」
私が寝ている間に猫ちゃんはどっかに行ってしまったらしい。
「コンビニでアイス買ってきたから一緒に食べよ」
お姉ちゃんはレジ袋からアイスを取り出し私に一つ差し出す。
それを受け取り開けてみるとアイスはほとんど溶けてしまっていた。
「あっちゃ~溶けちゃってたか」
「ありがとうお姉ちゃん」
「急にどうしたの?」
「いつも私の事見守ってくれてたんだよね」
「・・・・」
お姉ちゃんはいつも私の事を見守ってくれていた。
今日だって本当は私のために買い物に誘ってくれたに違いない。
アイスがこんなに溶けちゃってるのも長い時間私を探してたからだろう。
私はお姉ちゃんが大好きだ。
でも、こんな不甲斐ない自分が嫌いだ。
お姉ちゃんの様になれたらどんなにいいか。
「お姉ちゃん」
「ん?」
「私頑張って変わってみる。見守られるだけの妹は嫌だから」
「・・・わかった。応援してるね」
お姉ちゃんは優しく私の手を握る。
「うん」
心配をかけないぐらい立派な妹になると、私はこの日誓った。
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