その事実はきちんと認めなきゃいけねえ
そんなことを考えながら鉄を打ってると、
「ん……!」
と、家のドアを開けてそこに立ったトーイが声を上げていた。ちゃんと言わないのは褒められたことじゃないにしても、湯が沸いたことをちゃんと俺に教えに来てくれたんだ。しっかりと<仕事>はこなしてくれた。その事実はきちんと認めなきゃいけねえ。
「ありがとうな」
俺は礼を口にしながら、トーイの頭をそっと撫でる。大人から頭を撫でられるということに慣れていない子供がほとんどのここじゃ、そもそもその意味を理解してないのも多いだろうが、別に構わない。力をしっかりと加減し柔らかく相手に触れるという仕草を実践してみせてるだけだ。
ここじゃとにかく、相手をぶん殴るとかひっぱたくとか強く体を掴んで揺さぶるとか、そんな形の接触が普通だからな。そうじゃねえ触れ方もあるってのをやってみせる必要があるんだよ。
その後で、沸いた湯を風呂に流し込む。
そこで念のために温度を確かめるが。まだまだぬるい。せめてあと一回はでかい鍋の湯を投入する必要はありそうだ。だから桶で風呂のぬるい湯を汲んで鍋に入れ、再び沸かし始める。
「じゃあ、また沸いたら教えてくれ。それまではリーネと一緒に小さい鍋で湯を沸かしててくれ」
トーイにそう告げた後、
「そういうことで、よろしく頼む」
リーネにも声を掛ける。
「はい、分かりました!」
彼女ははっきりと返事をしてくれる。その時の表情が、かなり以前のそれに近付いてきてる気がする。だがまだまだ油断はできない。
俺は鉄を打つ作業に戻り、
そして
「ん……!」
トーイがまた湯が沸いたことを報せに来てくれた。
「おう、ありがとう」
俺はまたそう応えて頭を撫でてから、鍋の湯を風呂に入れに行く。
こうしてかなりいい感じになってきたがさすがにまだ時間が早かったので、
「それじゃ果実と木の実を採集を頼む」
リーネに頼んだ。
「分かりました」
彼女はそう応えて、トーイと一緒に森に入っていった。そして二人が、目印の布を木に吊るしてから果実や木の実や野草の採集を始めたのを確認し、でかい鍋で湯を沸かす用意をしてから、家に戻った。次は
もっとも、金よりも物々交換の方が今は確実だけどよ。金は大して役に立たねえんだ。
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