お前は俺の自慢の娘だ!!
ただの<水浴び>でしかないのをリーネが<FURO>だと認識してるのは申し訳ないが、まあ、ちゃんとした風呂を再現できないと彼女に理解してもらうのも難しいだろうし、その辺りについては敢えて訂正しなかった。ただ、
「これはまだ作りかけだから。本物の風呂はもっと気持ちいいぞ」
とは言ったけどな。
「そうなんですか? それは楽しみです♡」
リーネは笑顔で言ってくれる。ああもう、可愛いな。この笑顔を守りたい。
なんてことも思いつつ、二人して水浴びを堪能して、上がってから綺麗な水で濯いで、さっぱりした。
と、
「トニーさん! 肌がスベスベになりました! スベスベです!」
リーネが、裸のままで自分の腕を撫でながら言ってきた。
「お、おう。そうだな」
俺も、自分の肌を撫でてみて、彼女の言ってることを実感する。確かに明らかに滑らかになってるんだ。
まあでもこれは、たぶん、入ったのが泥水だったことで泥が皮膚の汚れを吸着してくれただけじゃないかな。<泥パック>みたいな感じで。いや、正確な科学的な理屈は俺には分からないが、少なくとも特別な効能があるわけじゃないと思うんだよ。
で、すごくすっきりすると、でも今度は、服を着た時に違和感が。
正直、着替えがないことで洗濯もそんなに頻繁にしないから、服自体が汚れてるんだ。別にそれ自体はここじゃ普通だからこれまでは気にならなかったが、変に体がすっきりしたことで感じてしまったんだろうな。
なので、
「……洗濯するか。どうせこの水も捨てなきゃなんねーし、捨てる前にこれで洗濯しよう」
「はい♡」
二人して服を脱いで風呂に放り込んで、裸のままそれを足で踏んで洗う。
「いっちに、いっちに!」
俺の掛け声に合わせて、リーネも、
「いっちに♡ いっちに♡」
笑顔で、すごく楽しそうに、俺の体を掴んで自分を支えて、何度も足踏みしたんだ。ホントに遊んでるみたいな感じで。
だから俺もなんだか楽しくて。
いいよなあ。いい。すごくいい。幸せだ。すごく幸せを感じる。
俺、生まれてきてよかった。アントニオ・アークとして。
そうだよ。これまでは、
『なんで生まれてきちまったんだ……』
って思いしかなかった。でも、今は違う。こうしてリーネと一緒に笑顔でいられてるのが、たまらなく嬉しいし、幸せなんだ。こんな世界に生まれてきちまっても、こうやって幸せを感じられる。
前世の世界の方がずっと便利だったのに、幸せじゃなかった。それは別に、『不便だからこそ幸せを感じられる』とか、『便利すぎると不幸になる』とか、そういうんじゃないんだ。結局、傍にいる人間との関係性なんだよ。
それが幸せを感じられるかそうじゃないかの違いになると思うんだ。
ありがとう、リーネ。
お前のおかげで、俺はそれを知ることができたんだ。お前と出逢えて、本当に良かった。
今なら素直に言えるぜ、
「リーネ、愛してる♡ お前は俺の自慢の娘だ!!」
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