風呂じゃねーけど
まるっきり<ぬるい水>でぜんぜん風呂じゃねえが、ああ、これはこれで悪くない。冷たすぎないから割と気持ちいい。
それを堪能しつつ、俺は、浴槽の中を慎重に探った。尖っている部分がないか、割れた石の破片が残ってないか、ってことをな。加えて、敷き詰めた石が崩れてこないかってことも確認する。
でも、そこについては問題なかった。で、泥水だが体を撫でてみる。ぜんぜん不快な感じもしない。そういえば、こんな感じの温泉もあるよな。ほとんど水みたいな<冷泉>ってのもあるのか。
もし、あの湧き水に何か温泉とかにも含まれる特殊な成分でも含まれてたら、それこそ冷泉だな。
まあでも、その辺を確認することは今の俺にはできないから、どうでもいい。
と、俺が何となく水浴びを堪能してると、
「あの……私もいいですか……?」
リーネが期待に満ちた目でそう尋ねてきた。だから俺も、
「お、おう。いいぞ。好きにしろ」
とつい言ってしまった。するとリーナはためらうことなく服を脱ぎだして。
ここで慌ててもなんだか格好悪い気がして、内心では焦りつつも、平静を装ってた。何より、こうして平然と裸になれるということは、それだけ彼女が俺を信頼してくれてるということだ。前世の女の子らに比べれば羞恥心みたいなのも低いとしても、彼女が熱を出して小便を漏らした時に、
「服を脱げ」
と言った俺に見せた表情からも察するに、信用してない男の前で裸になるのは少なくとも抵抗があるんだろう。なのに、今はそれがまったくないのが、なんだか嬉しかった。彼女の信頼を勝ち得ている証拠だと感じられてな。
それに、今のリーネに対しては、俺はまったく性的な興味を持ててないのが自分でも分かる。まるっきり<娘>としか見てないんだ。その手の趣味を持つ奴らにとっては、
『ウラヤマケシカラン』
ってシチュエーションだとしても、いやいや、自分の娘だと認識してる相手にそんなもの感じるわけないだろ。てか、感じる方がどうかしてる。そう感じる奴は、自分がおかしいってことを自覚して、自制することを心掛けてもらいたいもんだな。
なんて俺の思考は関係なく、リーネはそろりと足を浸けてきた。<掛け湯>と言うか体を洗ってないが、どうせ泥水だし、上がってから綺麗な水で濯ぐつもりだし、別にいいや。今後、習慣にするのなら、掛け湯してから入るように言えばいいだろう。
で、俺が体を縮めると、そこに収まるようにしてリーネも浸かった。そして、
「気持ちいいですね、FURO♡」
って満面の笑顔で。
ああもう、可愛いなあ…!
風呂じゃねーけど。
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