リーネとの暮らしを

俺に与えられた<転生特典>かもしれない強運によって家と仕事場の両方を同時に得て、俺はリーネとの暮らしを始めることにした。


食事については、森で果実や木の実を採集し罠で獣を獲ればまあ何とかなるだろう。後は、現金、と言うか、物々交換で構わないんだが野菜とかの作物等については、俺が鍛冶で作ったものを提供すればいけると思う。


が、そのためにも今は、まず、この家を何とかしなくちゃな。雨露さえ凌げればとは思うものの、さすがに今のままじゃそれも心許ない。


で、リーネには家の中の掃除を任せて、俺は、傷みの激しい部分の修繕に当たる。


道具や材料は、前の住人が用意してあったものがそのまま使えた。これは、こっちの家じゃ必ず備えられてるものだからな。家の修理なんか自分でできなきゃまともに生活なんかできやしない。電話一つで専門の業者が来てくれる社会じゃないんだ。


そんなこんなで、夜が更ける頃には寝られる程度までは何とかなった。


ただ、ここには基本的に<風呂>はねえ。水で濡らした布で体を拭く程度が普通だ。が、個人的にはやっぱ風呂は欲しいな。なんとか作ろうと思う。


なんてことも考えつつリーネと寄り添い合うようにして眠った。




翌朝、家の方はある程度何とかなったことで、次は鍛冶工房を復活させる。ちなみに、この家、一部屋しかなくて鍛冶工房の片隅に寝床が設えられてるだけのハードボイルドな造りだ。もっとも、鉄を打つしか能のねえ職人バカならこれで十分だったんだろうけどな。俺も、別に不満はない。


風呂がないことを除けば。


でもなあ、水がな、ないんだよ。水を探して山を下ると、湧水が出てるところがあったから、そこで水を汲んで運ばなきゃいけないわけだ。それはやっぱり、リーネに頼むしかないだろうな。


<児童労働>とかなんとか言われたって、蛇口をひねれば水が出てくるような社会じゃないんだ。やれる奴がやるしかないのは事実なんだよ。現実が見えねえお花畑の戯言なんざ聞いちゃいられない。


とは言いつつ、無理はさせようとは思わないけどな。


そこまでは俺も割り切れない。


そんなこんなで、リーネには水汲みをしてもらって、俺は、炉の点検と、破れたふいごの修理をした。燃料の薪は十分に残ってたからそれもラッキーだったが、金床かなとこは、一般的な金属のそれじゃなく、どうやら元々ここにあった岩を削って加工したらしいものだった。普通の金床だと大抵は不要となれば売り飛ばされてしまうだろうし、そうでなくても他の鍛冶屋に持っていかれるだろうし、場合によっては盗まれることもあるから、わざとこうしたのかもしれないな。


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