世の中ってのはますます
そうしているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
が、ふっと目が覚めたら、なんとも言えない圧迫感があった。
天井が低い…?
壁が近い…?
てか、そもそも狭いのか…?
そこまで気付いた瞬間、ぞわっと背筋が寒くなる。
『なんだ!? ここは!? まさか、棺桶か……!?』
などとパニックになりかけた時、頭をよぎるもの。
「あ……カプセルホテルか……」
そうだ。俺は、家に帰るのが億劫になって、カプセルホテルに泊まったんだった。
『っかし、なんて夢だよ……異世界転生とか、バカか……? そんなこと現実にあるわけないだろ……』
そうだ。八十で孤独に死んで異世界に転生してそこで子供を拾うとか……
そういう願望でもあるのか…? いやまあ、正直言えば今の人生には不満しかないが。
会社でも、若い奴らは仕事を舐めてるしちょっと厳しくしたらすぐ辞めるし、だからといって甘やかしたらすぐにつけあがる。権利意識ばかり高くて自分を特別な人間だと思ってやがる。
二千年に入ってから生まれた俺も大概、上の世代からは<Z世代>だなんだと言われて、『やる気がない』だの『覇気がない』だの『甘ったれてる』だのと散々だったかもしれないが、今の若い奴らよりはまだマシだと思うぞ。
そう考えりゃ、世の中ってのはますます悪くなっていってるってことだろうな。近いうちに亡ぶな、日本は。
そうなる前に、金を溜めて、いざとなったら海外にでも移住するか。だから金を稼がなきゃならん。
なんてことを考えてるとスマホのアラームが鳴った。
そうして俺はカプセルから這い出してシャワー室でシャワーを浴びて歯も磨き頭と体をさっぱりさせた。
俺がいつも利用してるこのカプセルホテルは、クリーニングサービスもしてるところで、チェックインする時に受け取ったシャツとスーツをネクタイに着替える。下着は使い捨てだ。家に持ち帰ったって女房は好き好んで洗ってくれないしな。
ホテルを出てすぐ近くのコンビニでおにぎりと牛乳を買い、歩きながら朝食にして、ゴミは通りがかったコンビニのゴミ箱に捨てる。
『家庭ゴミは捨てないでください』とか書いてあるが、<家庭ゴミ>じゃないから別にいいだろ。気が向いたらこっちのコンビニでも買い物することがあるんだ。だから俺は常連の上客だ。このくらいサービスサービス。
と、歩道に戻ろうとした時に、歩道を猛スピードで走ってきた自転車と危うく接触しそうになった。高校生くらいのガキだった。
『ったく、歩道は歩行者優先だって、親は教えないのか? 最近の親は躾もできねえんだな。俺なら、娘がそんなことしてたら張り倒すぞ』
走り去っていく自転車を睨み付けながら、俺はそんなことを思ってたのだった。
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