判断
リーネが熱を出して寝込んでしまったことで、俺達はそこに足止めされる形になってしまった。もちろん好ましい事態じゃないが、だからといって俺が癇癪を起こしても意味はない。ましてやリーネを責めてなんになる。
仕方ないので、今日はもうこの場に野宿する覚悟を決めてその準備を始める。リーネはもういいとして、俺自身が潜れるように落ち葉や枯れ草を集めるんだ。
無論、こんなところで寝るとなればリスクも高くなるものの、だからといって彼女を背負って移動するのはもっと危険だと思う。足場も悪いし滑落でもすれば共倒れになる可能性だってある。
結局は落ち葉に埋もれてなるべく匂いとかを紛れさせてやり過ごすのが一番なんじゃないかな。
その判断が正しいかどうかは俺は知らないし分からない。うまくいくことを祈るだけだ。
それでも、念の為、可能な限り周囲に罠を仕掛けておく。山の獣を罠で捕らえて食料にするために、ここの子供達はだいたい教わるヤツだ。しっかりした仕掛けを作れれば、猪(に似た獣)くらいは仕留められるぞ。
加えて、ナイフの点検もする。一口に<ナイフ>と言ってもこれまた場合によっては獣を仕留めたりその場で捌いたりするための、超実戦的な、肉厚でデカい、ほとんど<ナタ>みたいなものだけどな。俺自身が作ったものだ。この辺の鍛冶職人は、大抵、自分で打った刃物を護身用として携帯している。
そして悔しいことに、俺の父親が作った物の方が出来が良かった。弱い相手には強く強い相手には弱いクソ野郎ではあるものの、鍛冶の腕は確かなんだ。
なんてことを考えつつもナイフを手に俺も落ち葉と枯れ草の布団に潜り込む。
「う……」
リーネが小さく呻き声を上げる。怖い夢でも見ているのか、表情が険しい。だからつい、
「心配すんな…俺がついてる……安心しろ……」
まあ、普通に考えたら気休めにもならない戯言だが、そう声を掛けつつ、彼女の手を握った。するとリーネも、俺の手を握り返してきたんだ。
片手にナイフ、もう片方の手にリーネの手。それらを握りながら、俺も山と一体になる感じで息を潜めた。
すると、すごく遠くの方で、人間が怒鳴る声がしているのが、時折、風に乗って聞こえてくる。たぶん、兵士同士の戦闘だろう。何が嬉しくてそんなことをしてるのか知らないが、本当に迷惑な話だ。
今回、戦争を仕掛けてきた国だって、別にそんなに困窮してるわけじゃないそうだ。戦争を仕掛けてきた理由は、結局、外に敵を作ることで、民衆の不平不満をそちらに向けさせるのが目的なんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます