真っ平ごめんだぜ!

朝っぱなから気分悪い。何で世の中ってこんなバカばっかりなんだ? 俺みたいに真面目に働いてる奴が報われる社会じゃないから少子化も進むんだろうが。


ふざけんな。


そうして出社したが、会社は会社で、なんで使えないバカばっかり採るんだ? 人事の奴らは。


「ほらここ! お前、こないだも同じミスしてたよな!? 何遍同じミスしたら成長するんだ!? やる気あんのか!?」


「はい、すんません……」


「あ? 『すんません』じゃねえだろ!? そこはせめて『すいません』だろ!? お前の親はその程度の<躾>もできねえのかよ!?」


「……」


「なんだその目は!? 親をバカにされたってか!? だったらバカにされないようにちゃんとしろ!!」


「……」


「上司の仕事はガキのお守りじゃねえんだ! お守りじゃねえが、俺は優しいから言っておいてやる! お前ももう、成人おとなだろ!? だったらいつまでもガキみたいに甘やかしてもらえると思うな!! 現実を見ろ!! 分かったな!?」


「……はい……」


使えねえガキでも、なんとか使えるようにするために、俺は努力してんだよ。なのに、課長は、


「阿久津くん、君ね、<コンプライアンス>って言葉、知ってる? 知ってるはずだよね? 我が社でも何度も研修を行ってきたはずだから」


「…はあ……自分はちゃんと守ってるはずですが……?」


「あのね、『はあ』ってなに? 『はあ』って。君ももういい歳なんだから、言葉遣いというものをいい加減に考えた方がいいよ? それと、君には<パワハラ>の疑いが掛かってる。今年に入ってからも二度目の上申が来てるんだよ。この調子だと、会社としても何らかの対応をとらざるを得なくなる」


「<パワハラ>…ですか? 自分には心当たりがありませんが? 自分が入社したての頃に上司から言われたのと同じやり方をしてるだけです」


「はあ……阿久津くん、世の中ってのはね、時代と共に常識もやり方も変わっていくものなんだよ。我が社はそういう<機微>を敏感に捉えて常に新しいものを提案することで業績を伸ばしてきた。それは、社員一人一人の心掛けがあってこそ成り立つものだ。いつまでも昔のやり方に囚われているようじゃ、取り残されるだけだよ?」


「……分かりました。気を付けます……」




ったく、な~にが<コンプライアンス>だよ! そういうのにおもねってるから世の中を舐めたガキが、躾もされないまま社会に出てきてしまうんだろうが! やっぱもうダメだな。日本は。


とっとと金貯めて脱出だ。他の現実が見えてねえ奴らと心中とか真っ平ごめんだぜ!


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