第7話 『Real』

 高2の冬

 初めて、ライブハウスでライブをした。

それまで学園祭とか、学校のステージでしか人前でやったことなかったから、今回ライブハウスでやらせてもらえて、すごく嬉しかった。

俺たちの他に4つのバンドが出ていて、俺たちはまぁ前座って感じ。

お客さんも、他のバンドを観に来た人たちで、俺らは友達数名ってくらい。


想像してたより、ずっと狭い。

ステージも。

客席?も。

俺のマイクの真ん前に人がいるって感じ。

だけど、すごく良かった!

なんてゆうか、狭いからいいのかな。

一体感?

俺らの曲を知ってるわけじゃないのに、一緒にノッて盛り上がってくれる。

3曲だけだったけど、俺も興奮状態でだいぶハイだった。

気持ちよく歌った。


出番が終わって、裏に行ったところで、

「龍聖!ふざけんなよ!」

と、大輝に胸ぐらをつかまれた。

えっ?なに?

「勝手に名前、略してんじゃねーよ!!」

そう言われてもピンとこなかった。

「えっ?えっと、ごめん」

と、謝った。

自己紹介で、“”Real ボーカル 龍聖です!“” って言ったらしい。

けど、覚えていない。

桂吾が大輝のうしろから、顔を出し、大輝の肩をもみながら、

「大輝~、俺もさ~、リアルタイムロックって長くて、いつもかみそうになるんだよね~。

Realにしちゃわない?

かっこよくな~い? Realの方が~」

にこにこして、大輝の顔を覗き込んで言った。


大輝は、フッと口元を緩め、まぁいいや!とつかんでいた手を離して歩いて行った。


「桂吾、ごめん。ありがとう」

桂吾は、俺の顔をじっと見て、にこっとした。

「いや、ほんと、Realの方がしっくりくんじゃん!最初から、大輝が、バンド名は

“realtime’rock”だ!って言ってたから、はい!了解!って、まんま受け入れて言ってたけどさ。

龍聖がReal!って言ったの聞いて、すげーいいじゃん!って思ったよ!」


ちょっと先の未来で、Real Real 言ってるから、興奮状態の中で混同していた。


“realtime’rock”から“Real”に、名前を変えていたのが自分だったことに驚いた。

俺が、変えていたのか。

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