第3話 『須藤桂吾』

 彼の名前は、須藤桂吾


入学式なのに、標準服の制服じゃなくて、短ラン。

カッコイイ!!

同性をカッコイイと感じたのは初めてだった。

彼は、4組。

クラスが違ったけど、毎日気にして見ていた。

この外見、普通なら、先輩たちに目をつけられそうなのに、怖い先輩や、生徒会の厳しい先輩たちともすんなり仲良くなっている。

みんな気づかずに、本流に取り込まれているんだ。


 お告げとは違うけど、俺はある程度の予知ができる。ちょっと先の未来がみえる。


前嶋大輝が、俺を誘いに来るのがわかった。

どんな人かな?って、休み時間に1人で廊下で壁に寄りかかって待っていた。

廊下の向こうから、学ランの下に真っ赤なタンクトップを着た、変なパンチパーマみたいな人がこっちに歩いて来る。

おかしくて、つい笑いそうになるのをこらえて、無表情な顔をした。

「桜井龍聖?俺と一緒に軽音部でバンドやらないか?ボーカルやって欲しいんだ!」

低い、シブい声。

いい声だ。

「あぁ。いいよ」

即答した。

大きなオーラ。

簡単に読める単純な人。

裏表がなくて、真っ直ぐだ。

すごく熱い。

バイタリティーがある。

リーダーとしての気質を強く持っている。

でも、この人も支流。

だけど、共に流れるのは悪くない。

そう思った。


 次の日、放課後 部室に来いって大輝に言われたから行ってみると、中からピアノの音色が聴こえてきた。

澄んだ音。

繊細な指使いが、みえた。


ガチャッ

ドアを開けて入っても、そのままピアノを弾き続けている。

その人のオーラは、ちょっとだけ複雑。

芸術家タイプ。

一言で言うと難しい人。

ピアノを弾き終わると、立ち上がり

「8組の長谷川瞬です。よろしくお願いします」と俺に言った。

8組!特進か!

「あ、1組の桜井龍聖です。ボーカルをやらせてもらいます。よろしく」

と挨拶した。

「瞬は、ギターの方でスカウトしたつもりなんだけどな!ピアノめちゃうまだった!あはは!」

と大輝は笑った。

あと、目星をつけてるベースの人を誘って、4人組のバンドにするそうだ。


 ゴールデンウィーク明け、部室に3人でいると、ガチャッとドアを開けて、男が2人入ってきた。


わっ!!須藤桂吾だ!!


ここで、本流の登場なのかよ!!


「はじめまして!須藤桂吾です。よろしくお願いします」


須藤桂吾、普通に挨拶した!!

俺はできるだけ平静を装って、挨拶した。


「こっちは、武内悠弥!ベースをやってもらう」と大輝が紹介した。

見た目、目つきの悪いヤンキーみたいな感じ。

だけど、オーラを見た感じじゃ、素直で優しい人。

ギャップが、かわいい。


こんな至近距離で見ても、須藤桂吾のオーラはみえない。

みえないけど、ただただデカさは感じる。


「そう言えば、おまえ、楽器何できる?」

大輝が須藤桂吾に聞いた。


えっ?今?楽器できるから誘ってきたんじゃないのかよ?

「ギターかな」

瞬のギターを渡して、弾いてみろと言った。

須藤桂吾は、にこっとして、ギターを弾いた。

「瞬とは比べ物にならないな」

「ピアノも、弾けるけど」

弾いてみた。

「あ~、うまいけどな。瞬の方が格段にうまいな」

「バイオリンもできるけど」


バイオリン?

須藤桂吾 バイオリンひけんの?


「あはははは!バイオリンは、いらねーな!!

楽器は、これから練習してくれればいいや!

おまえ、ハーフなんだって?おまえ見て、一目惚れした。これは、女がほっとかね~な!って。

いいか!聴いてくれる人を集めて、バンドのファンを増やすのがおまえの役目!いいな!」

大輝はそう言って、豪快に笑った。

須藤桂吾、ハーフなんだ~。

なんか、カッコイイな。



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