第19話 『急転・中』
※本日19話と20話を同時更新します。20話が長くなるため19話がちょっと短くなることをご了承下さいませ。
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「さて、早速『箱庭』とやらを拝みに行きたいところだが」
「ここで転移するのは流石にやめた方がいいっすよね……」
ゼミ室には今のところ俺と先輩以外誰も居ないが、いつ人が来てもおかしくはない場所だ。
『箱庭』から出る時には転移した場所と同じところに出現するらしいのだが、外の様子を伺ってから出るというのは出来そうもないので、ここで転移してしまうと出てくるときに人に見られる危険がある。
別に悪いことをしているわけではないのだが、騒ぎになるのは避けたい。
「よし!今日は君の家に泊まるぞ!」
「うそでしょセンパイ」
「なにか問題があるか?」
「問題しかないだろ、俺一人暮らしなんすけど……」
「知っている。だから提案したんだが」
「うそでしょセンパイ」
思わず2回言った。蟀谷を揉んで頭痛を堪える俺を不思議そうに見る先輩に、ため息を吐きたくなる。
この人、ホントこういうとこあんだよな~~~~~!
まあ、別に俺には下心なんてないし?男女の意識とかしてるわけでもないし?ただの先輩後輩ですし?いーんだけどさぁ!
俺の葛藤をよそに、既に家に泊まる気満々らしい先輩はスマホを弄っている。多分家に泊まりの連絡入れたなこれ。
「まあ、いいっすけど……。『箱庭』の方寝泊りできそうな状態ならそっちで寝て下さいよ」
「?分かった」
分かったと言いつつなんも分かってなさそうな先輩の返事に今度こそため息が出るが、こうなっては致し方ない。『箱庭』の整備が必要な状況なら、俺がキャンプセット持って行ってそっちで寝よう。
鼻歌交じりに荷物を纏めだした先輩を眺めながら、ふと思う。
俺は今日、忍耐の髪飾りを装備して初めて、自分が未だ動揺していたことと、それを落ち着けるのに精神のステータスを上げればいいことに気付いた。食べ続けたドラゴン肉の効果で、俺の素のステータスでの精神は34まで上がっているが、それでも無自覚な混乱が残っていたのだ。
ならば先輩はどうだろう。
昨日見せてもらった先輩の精神の値はかなり高かったが、それは推定平均値と比べての話だ。実際の数字としては俺のステータスの半分もない。
表面上普段通りに振舞っているように見えるが、その精神は本当にフラットな状態だろうか。
先輩は確か実家住まいだったはずだが、タブレットなんかの話は家族にも話せていないだろう。ならば、事情を共有できる俺が傍にいる方が安心できる、故の今回のお泊り提案だというなら納得できる。
俺は少し考えてから、指に嵌めていた忍耐の指輪を外した。
「センパイ」
「ん?」
「これ、着けといて下さい」
そう言って指輪を差し出せば、先輩は俺の顔と差し出された手を交互に見て、なんというか……モジモジっとした。
「私と君の関係で指輪というのは、少し気が早いと思うんだが……」
「うそでしょセンパイ、ちょっと待って。ここでそういう反応すんの?」
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ちなみに現在の先輩と主人公の双方の矢印は、
主人公→先輩
下心はないが異性に対する意識はティースプーン一杯程度はあるので、全く男として意識されてないのはちょっと不満。
先輩→主人公
下心も男女の意識もないが、人柄に対する好感度は割と高いので交際もやぶさかではない。
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