2、事件発生
ライン王国の王都には、三つの通りがある。
一つ目は、貴族や王族、商人などの富裕層が住む大通り。
二つ目は、庶民の住宅や商店が並ぶ中通り。
三つ目は、身寄りのない孤児や浮浪者、娼婦などが集まる裏通りだ。
王都の中心には王城がある。その通りのことを、ライン王国の人々は大通り一本目と呼んでいた。
大通りは、更に南北に二本ずつ伸びている。北大通り二本目、南大通り三本目など、城から見た方角を頭につけて呼ぶ。
中通りは南北にそれぞれ二本ずつ。裏通りは細い道が入り組んでいて数え切れないため、まとめて南裏通りか北裏通りと言う。
王城に近ければ近いほど身分が高くなり、遠くなるほどその逆になる。
その娼婦の死体が発見されたのは、王城から最も遠く、最も治安の悪い北裏通りだった。
最初は誰も気に留めなかった。被害者は店に所属した正規の娼婦ではなく、道端に勝手に立って金を持っていそうな男を狙う袖引きだった。
厄介な客を引き当てた娼婦が、客に殴り殺されるなど珍しいことではない。見極めれなかったその女が悪いということになる。
だが、それも三人も続くと、流石に無視し切れなくなった。
被害者は十代後半から二十代前半の女性。黒髪黒瞳。身体の一部に、かつて奴隷であったことを示す鳥の刺青が入っている。
三人とも、息絶えるまで拷問じみた暴行を受けていたが、顔と、鳥の刺青のある場所だけは、傷一つなく綺麗なままだった。
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