第46話 帰宅中の
腹が苦しくなればベンチに座ってこなれるのを待ち、余裕が出来れば目についた屋台グルメを腹が苦しくなるまで食べてを繰り返し、
「「ぬぐうぅ」」
にっちもさっちもどうにもならない程、腹が膨れた。
それでどうなったかって?
「「あ、」」
揃ってポンッとダンジョンコアの欠片をひり出しました。
目の前に出てきた訳ではないよ?
断じて、お尻の穴から出てきた訳でもないよ?
座ってたベンチの上にころりしたの。
なんて言うかね、すっきりしたんだけど二人とも微妙な気持ちになった。
何て言うか、排泄行為?
お尻の穴からデテキタ訳じゃないけど、そんな感じだったのよ。
私達、排泄しないんだけど人前でこう、ぷりっと排泄したみたいな感覚で無茶苦茶恥ずかしい。
「「っ」」
誰にも見られないようにささっと掴んで収納鞄に突っ込む。
「・・・こなれちゃったね」
「そうだな」
「嫌なこなれ方だね」
「ああ」
「もう帰る?」
なんだか私、買い食いへの情熱が冷めちゃったよ。
「うむ」
フーさんも冷めちゃったみたいだね。
重々しく頷いているけど、排泄するみたいに欠片を出しちゃったからだよね?
私もそうだから、誤魔化しても無駄よ?
「気まぐれ屋か。帰るのか?」
「はい。沢山食べてお腹いっぱいです」
「祭りの間は不審者が多いから気を付けろよ」
「はーい」
門の衛兵さん達に挨拶をして街の外へ出
「気まぐれ屋とな!?」
『!?』
街の外へは出られなかった。
調度街へ入ろうとしていた黒塗りの馬車からどばーんっと飛び出して来た丸い人に行く手を遮られたからだ。
「君達が美味しい屋台を出すと噂の気まぐれ屋か!帰ると言っていたが、今回の祭りには屋台を出していないのか!?」
気まぐれ屋の噂を聞いて遥々ヴィータから来たのに、とか。
美味しい物が私の生き甲斐なのに!とかこちらが口を挟む暇を見つけられない程興奮して早口に捲し立てる。
“何この人。こっわ”
“これが噂の不審者か?”
私とフーさんは距離をとろうとするのだけど、後ずさった分だけ近づいてくるので離れる事が出来ない。
「衛兵さーん、助けてぇ」
「不審者だぞ、衛兵」
「お貴族様だから。不審者ではないから」
「グラント様。気まぐれ屋達が怯えております。どうかお止めください」
衛兵が間に割り込んで数人がかりで丸いのを引き離してくれてほっとひと安心。
馬車からも丸いのの使用人と護衛が出てきて、丸いのを諌めている。
「衛兵さん。あの丸いのなに?」
「しー。あの人はヴィータ王国の貴族だ。失礼な事を言わないように」
「はーい」
所でヴィータ王国って何処の国ですか?
「そこからかぁ」
その衛兵さん曰く、ヴィータ王国は周辺国連合の加盟国ではなく、フィスから南西方向の二つばかり国を越えた所にある鉱山とドワーフの多い工業の国らしい。
「美味しい食べ物が私の生き甲斐なのだ!」
『っ!?』
びっくりした。
心臓に悪いから急に叫ぶのはやめて欲しい。
「気まぐれ屋達よ。次はいつ屋台をするのだ?」
「「さあ?」」
うちの開店はフーさんの気分しだいなので。
「くっ、まさに気まぐれ屋なのだ・・・・」
しょぼーん、となる丸いのがコミカルで面白いけど、忖度はしない。
気まぐれ屋のメインはフーさんだからね!
「驚かせてすまなかった。行って欲しいのだ」
ありゃ、こんなことを言ってくれるとはおもわなかったよ?
「よ、よろしいので?」
物分かりの良い丸いのに、衛兵さんもびっくりだ。
「良い良い。料理人に料理を強制するつもりはないのだ。ただ、近いうちに屋台をやってほしいのだよ。長期間フィスに留まる事はできないのだ」
ちゃっかり要求をしてくる所は貴族的だ。
「に、兄ちゃんのやる気に期待してください」
「しているともぉ!」
おっふ、素直な反応ですこと。
変わった丸いの一行と衛兵さん達に見送られフィスを後にする私達だった。
「最後はなんかぐだぐだやったね」
「いつもの事だ」
「あー、」
うん、何だか納得出来て嫌だ。
「まあ、兎に角次は釣り階層やね」
「ああ。楽しみだ」
フーさんの声がるんるんと弾んでいる。
新しい階層を挟み込む事がとっても楽しみのようだ。
うん、私も楽しみにしている。
新しく挟み込まれた階層を体験した冒険者達は、いったいどんな反応をしてくれるのだろう。
フーさん渾身の安心安全な魚釣り階層を、彼等はいかにして楽しんでくれるだろうか。
負の魔力は、どれ程減ってくれるだろうか。
考えるだけでわくわくが止まらない。
「次は、魚料理だ」
「だねぇ」
「手伝えよ」
「はーい」
良かったね、丸い人。
次の屋台は近そうだよ。
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