第8話 現地のお肉達

 「あふ」

 はい、おはようございます。

 現在朝の8時、大分遅い朝です。

 服に着替えてパジャマは洗濯機へ放り込み、洗濯をスタートさせてから顔を洗う。

 化粧水とクリームを肌にぬって、やっと眠気が消えた。


 朝ごはんは昨日の残りの味噌汁、ちんした冷凍ご飯、鯵の開き、白菜の漬物。

 完璧ではないだろうか。

 朝ごはんを食べながら、朝からダンジョンで活動してくれている冒険者達を一通り眺める。

 ダンジョン生活3日目、今日も冒険者達は嬉しそうにモンスター達を狩っている。

 「今日も、頑張って稼いでや!」

 貴方達のその頑張りが、世界の滅びから遠ざけるのだから。


 「ああ、今日も黒いわぁ」

 冒険者達がいる階層を一通り見て終わったので、101階層をモニターへ写す。

 目で見えるぼど濃度の濃い負の魔力。

 地面を覆い尽くす、砂利のようなダンジョンコアの欠片。

 「すご、もう芽が生えちゅう」


 私が此処のダンジョンに来てから101階層にばら蒔いた、負の魔力を糧に育つ植物。

 どうやらアレは、地面ではなく壁に根を下ろしたようだ。

 ぼんやりと光を放つ小さな双葉がそこここに芽吹いている。

 「綺麗やけど、ちょっと不気味な感じやねぇ。見慣れんきかな?」

 光る植物なんて、苔か茸しかしらないから見慣れないのは仕方ないと思う。


 「頑張って花ぁ咲かせて、魔力を無駄遣いしてや!」

 モニター越しに双葉にエールを送る。

 さて、する事が無くなった。

 「・・・・・」

 これは全く関係ない話だが、私はながら作業が好きな質だ。 

 暇潰しに映画を見るとしても、何かをしながらが良い。

 だが、映画を見ながら出来る作業が今は無い。

 だからと言って、本や漫画を読みながらと言うのは集中出来ないし、何だかもったいない気がする。


 「・・・・」

 ちらりと、縁側の向こうに目をやる。

 そこにあるのは小さな家庭菜園。

 先が使っていた畑で、何も植わっていないが綺麗に耕されている。

 「畝をたてて、元気があったら種でも蒔くかな」


 なんて、朝は思っていました。

 「あ”ー、無理!」

 私、体力無いのよ。

 畝をたてて今日の畑作業はお仕舞いです。


 風呂でざっと汗を流して、軽くお昼ご飯を食べたら昼寝タイム。

 「・・・・・」

 目が覚めると夜でした。

 はい、寝過ぎました。

 縁側の雨戸を閉め、腹をなでる。

 「お腹空いた」


 さて、晩ご飯はどうしよう。

 何食べよう。

 此処に来てから結構食べたので、食欲は大分落ち着いている。

 そろそろ、此方の食品を食べるのも良いだろう。

 「よし、こっちのお肉を食べよう」


 いつか焼き肉をするために用意したホットプレートを座卓に設置。

 タブレットで、此方の肉と野菜をお取り寄せ。

 「いや、野菜ほぼほぼあっちとおんなじ名前やん」

 これは、結構な数の転生者が居たと言う証明だろう。

 此方産野菜を、態々カットしてお取り寄せ。

 とりあえず、ホットプレートの端で焼いておく。


 「さて、何肉から焼いていこうか」

 タブレットには最も安価な兎肉から、ドラゴン、ベヒモスといった王様でさえ食べる事の出来ない肉食まで並んでいる。

 オーク肉だって勿論ある。

 「ここは、安い肉からやね」

 普通であれば最高級の肉から食べるのが胃袋的に正解であろうが、今の私の胃袋に限界と言う二文字は無い。


 兎肉は濃いピンク色で、脂身が全く無い。

 火が通り易いように薄い削ぎ切りにして、さっと焼く。

 兎肉が焼き上がるまでに、次の肉を用意する。


 蛙肉と蛇肉。

 これもライトノベル読みとしては外せない。

 見た目は両者共にササミに似た薄いピンク色。

 若干、蛙肉の方がぶりんと弾力がある程度。


 よし、兎肉が焼けた。

 塩コショウを振りかけてっと。

 「いただきます」

 ・・・・これはっ!

 「兎うまっ」

 肉は固めだが、臭みもなくあっさりしていて食べやすい。

 ただ、兎肉は初めて食べるので此方と彼方の兎の味の違いは分からない。

 私、ジビエは食べた事ないので。

 「ああ、これは他の肉も期待大やわぁ」

 一番安価な肉でもこの旨さ。

 ああ、期待が膨らむ。


 蛙肉はぶりんとジューシー、蛇肉は硬いけど旨味の塊。

 鹿肉はもっちり食感が堪らない。

 牛肉はとろけた。


 オーク肉は普通に美味しい豚肉だった。

 ちょっとガッカリだったけど、私はちゃんとタブレットを見ていなかった。

 オークもそうだが、これまで食べた肉の魔物にはすべての上位種がいる。

 魔物肉が美味しい理由は肉に含まれた魔力の濃度。

 上位種の肉が、下位種よりも魔力濃度が薄い筈が無い。

 ああ、計り知れない魔物肉のポテンシャル!

 私はまだオーク肉までしか食べていないけど、上にはまだ上がいる!!


 「ああ、ヤバいわぁ。私、元の世界の肉食べれなくなりそう」

 それもこれも全て魔物肉が美味し過ぎるのがいけない。

 「野菜は、どうながやろ」

 魔力で旨味が増すんでしょ?

 期待大なんですけどー。

 「うっまぁ」

 野菜も最高。

 うん、此方の野菜と比べると彼方の野菜は味が薄過ぎる。


 素材の美味しさたけで、満たされる。

 料理を発展させる必要性を感じない。

 「うん、こっちの食材強敵やわぁ」

 でも大丈夫。

 私のダンジョンから出た食べ物は、彼方の物が元になっていてもダンジョンの産物なので魔力たっぷり含まれていますから。

 でも正直な話し、魔力が含まれていなかったら素の食材の力に負けていた可能性は大きいと思っている。

 「料理が発展せんかったのにも、ちゃんとした理由があるのねぇ」

 私、納得しました。

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