第9話 危機来たるぅ!?
はい、ダンジョンマスターになって4日目。
早くも命の危機が来ましたぁ!
昨日までのんびりだったのに、落差が酷い。
いや、ダンジョンマスターは不死だし、このダンジョンを攻略出来そうな冒険者も今のところいないよ?
でもね、龍なの!
今私のダンジョン、複数の龍に襲われているの!
大ピンチ!
超ピンチ!
なんでって?
原因は私です。
元に戻したけど、ダンジョンの領域広げちゃったでしょ?
なんか、アレがいけなかったらしい。
私がダンジョンを広げて世界を飲み込もうとしているっ思われちゃったみたいなのよねぇ。
ちょっとした間違いなんたけど、龍を刺激しちゃってダンジョンに飲み込まれる前にダンジョンマスターを倒せって言い出したのがいたみたいなの。
龍達の先頭に立って魔物を
会話を聞いていると追いかけている龍達は火龍を止めようとしているみたい。
ダンジョンマスターは生まれたてで、手探りなんだとかなんとか言って火龍を宥めようとしてくれている。
私の為にももっと張り切って説得してもらいたい。
悪意は無かったのよ、悪意は。
あったのは、好奇心。
なのに、敏感すぎるよ火龍さん。
やらかした私がいけないけどさ、もうちょっと穏やかに注意とかしてほしい。
「ちょっと、やっばかったかなぁ」
なんか龍って、先代の時には100階層も気軽に遊びに来ていたみたいなのよ。
転移石を全部新しくしたから記録はまっさらになっていたんだけど、そうじゃなかったら一瞬でここまで転移されて殺されていた所だよ。
ほんと、勘弁してください火龍さん。
「今のうちに対策考えんとなぁ」
今はまだ20階層とかそこらだけど、相手は龍だからね。
彼らにとって、20階層の魔物は物の数には入らない。
吐息一発でお仕舞いだ。
なんとも呆気ない最後である。
「出来れば早いとこ帰ってもらいたいしねぇ」
火龍の快進撃を眺めながらタブレットをポチる。
35階層にある全ての下り階段に龍にだけ有効な扉を設置。
扉を開く為の条件は、源氏物語全巻(原文)を全て読んで各章毎に感想文を5万字以上を24時間以内で書くこと。
分担は不可。
全てやりきった者のみが扉を通る事が出来る。
36階層に行きたい龍は避けては通れない仕組みにしておく。
あ、龍は転移石使用不可に変えておこう。
さあこの異世界の言葉、更には古文かつミミズがのたくったような難か・・えふん、達筆過ぎる文字。
脳筋らしき火龍には難しかろう!
私?
私、古文って苦手だったんですぅ。
はなっから読もうと思いません。
まあ、後で気が向いたら源氏物語の漫画版を読んでおこうかなぁとは思ったりもする。
え?
龍の巨体で本が捲れるのかって?
あの人達、人化出来るみたい。
ダンジョンに入って来た時から人化していたから。
いや、人化って言うよりも龍人化?
頭部には角、背中には翼、尻には尻尾がついている姿に全員なっている。。
ついでに言えば、全員超美形。
じっと見つめているとお目々が瞑れる気がするよ。
あ、あとね、源氏物語は本ではなく巻物なので捲りはしない。
後の始末が面倒になって、焦れてくれる事を密かに期待している。
因みに器物損壊しようとした場合は、即座にダンジョンから叩き出します。
ついでに言えば魔力搾取のオマケ付きです。
そしてさらに、36階層からも龍用の面倒な仕掛けを用意。
鍵が1万ピースの真っ白なマイクロジグソーパズルになっている扉。
30㎏の玄米を一粒づつ箸で摘まんで移動させれば、鍵が手に入る仕掛けの扉。
混ざった粟と稗を分別しなけなければ開かない扉。
勿論、器物損壊しようとした場合は魔力搾取してダンジョンの外へぽいっだ。
思い付く限りの、細かくちまちました作業を並べてみた。
こんな事、私は絶対にやりたくない。
気が短そうだし、きっと火龍もやりたくないだろう。
「これで時間稼ぎはオッケー」
やる気なのは火龍だけだからね。
アレが諦めれば皆帰る筈!
て言うか、早くダンジョンから出て行ってください。
龍がいるってだけで落ち着かないし、ダンジョンが荒れて大変なんです。
彼等の襲来があってからずっと、事態を把握できていない冒険者達が右往左往しているのよ。
危うく吐息で消し飛ばされる所だった冒険者パーティーもいたし。
本当に危ない所だった。
「誰も死なんで済んで?ほんっとぉに良かったわぁ」
帰りは、火龍が諦めた所で龍達全員ダンジョンの外へ放り出したら良い。
どっちにしろ、ぽいっだね、ぽい。
火龍以外の魔力はまぁ、勘弁してあげよう。
彼等は、一応火龍を止めようとしてくれていたしね。
さて、取り敢えず一階層から復旧していくかぁ。
え?
龍と話しはしないのかって?
火龍を止めてはいても、他の龍達はうちの魔物を問答無用で曳き殺していっている連中ですよ?
怖くてお話しなんて出来ません!
魔力を見逃してあげるだけで十分だと思います。
さて、そんな事よりもお仕事お仕事。
うんうん、冒険者達は龍が通った後から離れているね。
あ、危なく吐息で消し飛ばされそうだったパーティーが龍達の跡をたどっている。
まあ、彼等はベテラン勢だから、何が通ったのが探ろうとしているのだろう。
「ご苦労様です」
彼等はふざけているようで、真面目な冒険者達なのだ。
お仕事の邪魔をしてはいけないので、彼等のいる階層よりも上の階層を指定してタブレットをポチる。
一気に荒らされた所を修復。
おおー!
負の魔力が一気に減ったと思ったら、直ぐ元に戻ったよ。
まあ、対龍用の仕掛けと合わせて幾つか欠片が減ったから良しとするよ。
あ、冒険者達が帰還石で帰っていった。
なら、今龍達がいる階層の一階層手前まで修復しよう。
ああ、負の魔力が捗るわぁ。
「火龍が36階層に降りる階段に着いたわぁ」
他の龍はまだ後ろの方で追いかけている。
やる気が違うものねぇ。
「・・・・うっわぁ」
え?マジですのん?
火龍ってば注意書きも読まずに扉へ
私的には好都合なんだけど、脳筋過ぎない?
扉が壊れないって、きいきい騒いでるし。
当たり前でしょ、ダンジョンの壁や扉は基本不壊ですよ?
なんで今まで無かった扉が有ることを疑問に思わないのかなぁ。
理由があるに決まってるじゃないの。
あ、後続の龍が追い付いてきた。
取り敢えず、火龍は魔力を搾取してダンジョンの外にポイしましょう。
突然消えた火龍に他の龍が慌て始めたよ。
良かったわぁ、残りの龍は火龍よりも考える頭があったみたい。
扉へ違和感を持ち、課題と注意書きを読んで火龍のしたことを予測して呆れている。
ですよね!
だって、器物損壊しようとした場合は外に叩き出しますって、赤字で分かりやすく書いてあるもの。
なのに火龍は読みもせずに吐息をドーンだもの。
どうやら他の龍達は扉の課題へ挑む事にしたようだ。
それぞれの前に巻物が山積みになって現れる。
「くふっ」
予想外の量だったようで、戦く姿が面白い。
「ふっははははははは」
巻物を開いて目にする異世界の達筆過ぎる文字に困惑する様が愉快極まりない!
「よっしゃ、期待以上!」
どうやら、長いこと生きている龍でも、異世界文字は読めないようだ。
私も原本なんてとても読めないけどね!
ナイス源氏物語!
素敵です、式部さん!
他の仕掛けの出番が無さそうな事が残念だけど、ダンジョンの防衛力が上がったので問題は無い。
全員諦めて巻物を巻き直しているし、お帰り願おう。
「もう、来ないでください!」
願いを込めて、全員ダンジョンの外にポイする。
それからの彼等がどうなったのかは知らない。
けれども彼等がダンジョンに入って来なかったので、諦めたのだと思う。
ただ彼等は私の味方ではないので、油断だけはしないようにしたい。
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