第27話 屋台出店までの歩み?

 正式に商人ギルドへ加入出来たので、私達の次にする事はこれしかないだろう。。

 屋台の出店申請。


 「何日間にする?」

 「兄ちゃん次第だねー」

 もらった出店の申請用紙を前に、屋台を何日間出すか話し合う。

 1日単位だと出店料は1000ギルなのだけど、7日単位になると少し割引されるのだ。

 「俺、料理は好きだが7日連続で同じ物を作るのは嫌だ」

 「あー、私も連続では嫌やねぇ」

 「2日?」

 「2日であの肉片付く?」

 フーさんってば、張り切ってワイルドコッカーを狩りまくったから、私達の収納の中にはワイルドコッカーの肉が大量にある。

 「3日」

 「それが無難かも」

 

 はい、出店期間は3日に決定。

 品目は、今回は焼き鳥。

 次はなんだろうね、寒天の使い方がーとかフーさんってば言ってたから、ゼリーだよねぇ。

 話しながら、申請用紙の空欄を埋めていく。

 屋台の店長はフーさん、店員が私。

 焼き鳥は他の串焼きと比べて小さいので、1本鉄貨2枚。


 「よし」

 書き終わったら、受付けカウンターで提出。

 「やきとり?」

 受付けのお姉さんは不思議そうに首を傾げたが、フーさんが串焼きの親戚だと言うと納得した。

 「屋台のレンタルも出来ますが、屋台のあてはありますか?」

 「自前の屋台があるから、必要ない」

 「分かりました。では、屋台の確認が必要になりますので、今日明日中に持ち込みをお願いします」

 

 屋台の確認なんてあるのね。

 抜き打ちでギルドの監査があるとは説明されていたけど、これも監査の内なのかな?


 「今からでも問題ない。なあ?」

 「うん」

 「そうでしたか」

 お姉さんの視線が、私達の腰へ向けられる。

 そこにあるのは、私のダンジョンでだしている収納鞄。


 はいはい、屋台も持ち運んでいるけど、他の物も色々と入ってますよー

 鞄じゃなくて、スキルの方の収納にはもっと入ってますよー

 態態、面倒事なるような事は言わないけどさ


 「では、確認致しますので、こちらへどうぞ」

 お姉さんは別の人に受付けを任せ、私達を手招く。

 案内されたのは、商人ギルドの裏庭。

 荷物の積み降ろしに使う事もあるという場所は、とても広い。


 「こちらにお願いします」

 「ああ」

 「はーい」

 私達の屋台のお手本は、昔ながらの屋台のおでん。

 引いて移動する為のリヤカーは無いが、土台となる骨組みを組み立て、軽く作った屋根を乗せ目隠し替わりの棚を左右に設置。

 丈夫な天板を正面に乗せ、半分に取り替えを前提に用意した焼き台を据え付ける。

 此処はフーさんのスペース。


 私は残ったもう半分で商品の受け渡しと、代金を受け取る係。

 私とフーさんの間に、焼き上がった焼き鳥を入れる食品保存用の収納箱を設置。

 勿論、見た目以上に入る魔道具です。

 商品を包む葉っぱとスライム製の受け皿、浄化の魔道具、ゴミ箱を所定の位置に設置すれば完成だ。

 広さはだいたい一畳程。

 高さ?

 フーさんが180㎝越えの長身なので、それに合わせて2mありますけど?

 

 「これが俺達の屋台だ」

 「私達で頑張って作ったんです。どうです?お姉さん」

 「組み立て式の屋台とは、珍しいですね」

 お姉さんは何かの書類を片手に屋台の施設を一つ一つ確認し、チェックを入れていく。

 「エプロンと頭を覆う三角巾はありますか?」

 「はい」

 「ああ」

 

 はいはい、ありますよー。

 昨日商人ギルドにで慌てて購入した真っ白なエプロンと三角巾。 

 ポーチから引っ張り出して、お姉さんに見せる。

 「こちらは、直営店の物ですね」

 するっとオッケー貰えました。

 「色の薄い物でしたら白ではなくても問題ありませんよ」

 「後で買い直します」

 

 白一色は、面白味がないもの。

 て言うか、色の薄い物って縛りは清潔にしていないと汚れるからですよね?

 徹底しているねー。


 「爪を見せていただけますか?」

 「はい」

 伸びた爪は、不衛生だものね。

 安心してください。

 今の私達の体は厳密には生き物ではないので、新陳代謝していません。

 なので、爪も髪の毛も伸びません。

 

 「はい、大丈夫です。屋台の設備も問題ありませんので、営業許可証を発行致します」

 「やったね、兄ちゃん」

 「ああ、そうだな」

 「屋台の営業は、3日間と言うことでしたね。何時から営業されますか?」

 「「明日!」」

 「・・・承知致しました」


 その、少しの間はなんなのかな?

 早すぎじゃない?って言いたいのかな。

 「明日も大丈夫なのですが、あまり良い場所はありませんよ?」

 あ、こう言う意味の間なのね。

 「問題ない」

 「場所が駄目でも、匂いで誘き寄せますから」

 焼き鳥の匂いは、万人の食欲を直撃すると私達は確信している。

 

 「・・・・分かりました。では、営業時間はどうされますか?」

 朝食の兼ね合いがあるので、屋台は兎も角、食堂は早朝からやっている所が多いそうだ。

 「ちょっと待ってくれ」

 お姉さんから距離をとり、しゃがんでお話しあい。


 「俺、朝は寝たいのだが」

 「私も」

 焼き鳥を売りたいが、私達は朝はゆっくりすごしたいタイプなのだ。

 「朝からは無しだ」

 「無しだねぇ」

 では、朝からの営業は無しだとして、何時から屋台をやるかだ。

 

 「9時?」

 「中途半端だし、はえぇよ。11時半」

 「がっちりお昼やね。ありだと思います」

 「じゃ、それで」

 「あいあい」

 

 お姉さんに11時半からやりますと言うと何だか微妙な顔をされたが、2人して11時半を主調。

 私達の営業開始時間は、無事に11時半になりました。

 組み立てたばかりの屋台を解体して、ポーチに分担して仕舞い込む。

 片付けている間に出来上がった許可証を受け取り、3日分の出店料を支払い、私達の屋台の設置場所を確認。

 開始時間が遅い所為で、広場の外れになってしまったが、問題ない。

 お姉さんに言った通り、タレの匂いで誘き寄せればいいのだ。

 そうそう、許可証は営業の終わった次の日に返せば良いそうだ。

 

 「宿に戻って、今日と明日の飯を用意するぞ」

 「おー!」

 その前に、宿に戻ってから明日以降の宿の延泊料金を払ったよ。

 だってさ、うるさいお客はいるけど店主のグレイは気に入っているもの。


 そうそうその時に屋台は明日の11時半から始めるとグレイに言ったら、商人ギルドのお姉さんと同じような顔をされた。

 いいじゃないの、11時半。

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