第25話 デジャヴを感じる講習会
で、色々あって講習当日。
「「行ってきます」」
「ああ」
グレイに見送られ、商人ギルドへGO。
「2階の会議室へどうぞ」
仮ギルド証を見せると、2階の以前試験を受けた部屋に案内された。
この部屋、会議室だったらしい。
会議室には、私達以外にも屋台開業を目指すお仲間が既に5人待っていた。
私達が来てからも2人来てから、総勢9名で講習会が始まる。
講習会の一番最初は、何故衛生に気を付けなければならないか。
不潔にすれば、どんなリスクがあるのか。
衛生を疎かにしたことで起こった不幸と、どうすれば防ぐ事が出来たのかを考えるグループディスカッションを午前中いっぱい。
なんだか、学生の時にクラス全員で受けさせられた衛生管理者の講習を思い出した。
それぞれお昼ご飯を食べてから、午後は屋台を出すにあたっての決まりごとの説明。
エプロンと三角巾の着用義務。なお、三角巾は髪を覆い隠せて清潔ならどんな布でも可。
生活魔法の浄化は必須。使えない場合は、浄化の魔道具を設置すること。
開店前、閉店後の周りの掃除と器具の浄化の徹底。
小まめな手指の浄化。
ゴミ箱の設置義務と分別。
ゴミの集積所と再利用。
講習の、最後10分で、屋台を出す日数別での出店場所の区割りと出店料の説明。
明日は現地での説明と、講習の内容をきちんと覚えているかの試験をやって、合格者にだけ屋台業者用の商人ギルド証が発行するそうだ。
出店場所の区割りとか出店料とか、もうちょっと説明があっても良いと思うんだけど、妙に早口であっさり終わった。
エプロンと三角巾の持ち合わせは無かったので、商人ギルド直営店で購入。
真っ白なのしか無かったので、後日改めて別の店で購入したいと考えている。
て言うか、明日に講習の理解度確認試験があるとか、寝耳に水なんですけど!
「試験か」
「あるとは思わんかったねー」
「そうだな」
商人ギルドを出て、ぶちぶちと感想やら文句やらを言いながら宿へ向かう。
「今日の晩ご飯はなんですか?」
「親子丼」
「・・・なるほど」
半端に余った鳥肉の切れっぱしがそれなりの量あるものね。
「文句があるなら、」
「無い無い。文句なんてあるわけ無いです!」
晩ご飯抜きとか、勘弁してください。
「「ただいまー」」
「おう」
ひょいっと、グレイが共同調理場から顔を出す。
肉を焼く匂いがするので、彼も晩ご飯の用意をしていたのだろう。
「私達も使って大丈夫ですか?」
「此処は共用だ。好きに使ってくれ」
「はーい」
ということで、グレイが肉を焼く隣でご飯を作る事になった。
「じゃ、米は私が炊くね」
「ああ、頼む」
「珍しいものを食べるんだな」
流しで米を研いでいたら、グレイから声をかけられた。
「珍しいんですか?」
米を食べる所はあると、知ってるよ?
「幾ら安いと言っても家畜の飼料はなぁ」
「米を食って育った豚は美味しいですよねぇ」
米が家畜の餌ってのは、ライトノベルの良くあるネタだよねぇ。
でもねぇ、元いた所でも飼料米は普通に作られていたし畜産の現場では使われていたからねぇ。
飼料扱いも当然でしょ。
豆もトウモロコシも飼料だしね。
「豚が食いつくって事は、人が食っても美味しいって事です」
「そうか?」
グレイは首を傾げながら、焼けた肉を皿に乗せて去って行った。
ま、料理なんてやり方次第で幾らでも不味く出来るからねぇ。
「よっこいしょ」
米と水を入れた土鍋をコンロにかける。
このコンロ魔道具って話しだけど、多分って言うか確実に転生者が関わっている。
形がねぇ、どう見ても3つ口のガスコンロだもの!
さて、火加減に気を付けつつ、じっと待つ。
赤子泣いても蓋取るな!だよ。
隣から良い匂いが気になるけど、隣を気にしすぎて焦がしてはいけない。
「良い匂い」
「飯が楽しみだな」
「うん」
「米は?」
「まだまだ!」
「そうか」
ご飯が炊き上がっても、直ぐに食べる事は出来ない。
まずは、銭湯に行ってからだ。
「よし、具はこれで、そこっ」
「ふぇ?」
言葉を途中で切ったフーさんは、出入口に向けて何かを放った。
「外したか」
「どうかした?鼠?」
「ああ。質の悪い鼠がいたが、逃がしちまった」
「質の良いチュー公なんておらんし」
鼠は、農家の大敵だ。
いそうな気配を感じたら、即対策をして駆除しなければならない。
鼠は、全殺しよ!
「残念やねぇ」
フーさんは、箸を投げたらしい。
壁にぶっささっているが、鼠は捕らえていない。
「次はヤらんとね、兄ちゃん」
「ああ」
フーさんは、壁にささった箸を抜きに行き、カウンターにいたなんだかグレイと話している。
壁に穴を開けるなと言われるのは分かるが、余り脅すなとはどういう意味だろうか。
脅しすぎると鼠をヤれないと言うことだろうか。
あー、鼠を仕止められないのは問題だよねぇ。
「お、」
ぶじぶじと、土鍋が音を立て始めた。
沸いてきたようなので、吹き零れるのを待って火を強火から弱火に変更。
フーさんと、並んで見守る事15分。
蓋をほんの少し開いて水分が無い事を確認。
よし
水分はすっかりなくなっていたので、10秒強火で温めてポーチではなく収納スキルへin。
「グレイさん、風呂札くださーい」
「ん?ああ、ほれ」
「ありがとー」
「あ」
「「?」」
呼び止めるような声に、振り返る。
グレイは何か言い辛そうに口をもごもご動かす。
「あー、お前らの屋台はいつから始めるんだ?」
「お客さん!?」
「客か、貴様!」
「お客さんを貴様呼ばわりは無いよ、兄ちゃん」
フーさんの腕をべしりと叩き、グレイを見上げる。
お客さんには、宣伝しとかないといかないかな?
「屋台は出せるようになったら、直ぐに出すつもりですけど、予定は未定です」
「そうか。いつ何処に出すが決まったら教えてくれ。買いにいく」
「はい」
「うちの屋台は、何を売るかはその時次第だぞ」
あ、そうそう大事な事を言ってなかった。
いつ何を売るかは、作り手であるフーさん次第。
メニューなんて物は無い。
「でも、一番最初は焼き鳥です!」
「やきとり?串焼きか?」
「そんな感じです」
私としては、違うと言いたい。
けれども、焼き鳥も結局は串に刺して焼いているから串焼きなんだよねぇ。
「ダンジョンから出た本を参考に、うちの兄ちゃんがアレンジしてるんで、すっごく美味しいですよ」
「ほう、あの本か」
グレイもあのゴブリンシリーズを知ってくれているようで、絶対買いに行くと念押ししてくれた。
うん、私も楽しみ。
と言うことでお風呂に行って、親子丼。
ご飯の炊き具合は、まあまあ。
フーさんの作った具はとても美味しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます