第11話 一大イベントですか

 さて、私がダンジョンマスターになって半年が経った。

 時間が飛び過ぎ?

 あの龍の襲来があってから特にこれと言った出来事が無いから、これで良いんですぅ。


 まあそうね、強いて言えばダンジョンの領域をほんのすっこし広めた事?

 龍の襲撃を忘れたのかって?

 ちゃんと覚えてえるよー。

 けどさぁ、どうしても町から流れ込んでくる負の魔力か必要になってしまったの!

 

 何故って?

 盗聴をするためよ。

 盗聴が、今のところ唯一のダンジョンの外の情報を直接得る事の出来る手段なんだから。

 それでも、盗聴出来るのはダンジョンから一番近い町からだけなんだけどねぇ。


 まあ、盗聴は犯罪だから良い子も悪い子も絶対に真似しないように。


 え?

 そんな事よりどうやって盗聴しているのか気になるって?

 宝箱から出す魔道具に、盗聴器をしかけました!

 あ、言っておくけど、私が仕掛ける盗聴器も、聞いている盗聴器も常に一つだけだからね。

 聞いていて面白くなくなったら、若しくは何も聞こえなくなったら即、聞くのを止めて次の盗聴器付き魔道具を世に送り出す。


 因みに、盗聴器を仕掛けているのはライター。

 見た目は100円ライターではない。盗聴器を仕掛け易いように、ジッポライター。

 燃料はオイルではなく、魔道具らしく極小の魔石。

 魔石の交換が出来ないので、使いきると他のダンジョン産乃魔道具と同じ様に崩れて消えるが、簡単に火を着ける事が出来るので、なかなか人気の一品だ。


 崩れて消えるのは、ダンジョン産の物に良くある仕様です。

 ダンジョン産の物は全て負の魔力で出来ているので、負の魔力を使いきると普通の魔力に昇華されて形が保てなくなって崩れて消えます。

 例外はありません。


 ただまあ、あんまり出力の高い盗聴器を仕掛けると勘の良い人には直ぐばれちゃうし、ライターとしての寿命が短くなるから盗聴機の機能は最低限。

 町からダンジョンへと流れ込んで来る微弱な負の魔力に拾った声を乗せて、何とか聞き取っている。

 だから、領域を広げちゃいました。

 後悔はしていません。

 ちょっと不便だし聞き取りづらいけど、外の情報を得る手段がある事が大事ですから。


 では、盗聴の結果知ることの出来た事を幾つか挙げよう。

 盗聴が出来るダンジョンから近い町のは、ダンジョン対策の最前線の砦から発展した冒険者の町フィス。

 急に宝箱を出すようになり、安全地帯や転移石の出現にギルドは一次騒然としたようだったが、他の冒険者ギルドから取り寄せた情報の中に同じような現象があったお陰で、今は落ち着いている。

 

 「うちのダンジョンの食べ物は、大人気らしいしね」

 ふふふ、この世界の料理が発展していないお陰で、私のダンジョンは大人気!

 最近は下層で料理を出すようになり、調味料も出すようになった。

 ていうか、砂糖や塩は生やしてる。

 他にも、随時香辛料を生やしていく予定だ。


 宝箱から出る食べ物のラインナップは少しずつ増えている。

 魔道具も出すけど、食べ物系が増えたので、私は宝箱の仕様を少し変えた。


 や、宝箱の見た目も、材質が木製なのも変わらないよ?

 中身が大体分かるように、蓋にマークを付けるようにしただけ。

 パンならフランスパン。

 料理はナイフとフォーク。

 携帯食はジャーキーと乾パン。

 調味料は小袋。

 魔道具なら巾着袋。

 そんな感じにざっとこんな感じ。


 菓子?

 菓子は出てくる階層を決めてあるのでマークは無い。


 それで、順調なんだけど、最近少し悩んでいる。


 うちのダンジョンは周囲を幾つかの国に囲まれているのだけど、近々各国の軍と冒険者が合同で1階層の魔物を一斉に狩る年に一度の一斉討伐というイベントが大々的に行われるらしい。

 負の魔力が大量に昇華される、私にとっても素晴らしいイベントだ。

 なのだが、そこで使うポーションが不足しているそうなの。


 怪我人が増えてイベントが滞ったら困るから、一応、私も薬草の群生地を増やしたり、群生地の回復を早めたりして協力している。

 でもねぇ、イベントの規模が大きすぎる所為で足りていない。

 で、出そうかどうしようかと思っている物がポーション。

 問題の解決にはならないだろうけど、宝箱からポーションが出るようになれば多少は問題が緩和されると思うのよ。


 なら何を迷っているのかって思うでしょ?

 収納鞄とか他にも魔道具を出しているから、今更ではあるのよ。

 分かってる。

 でもねぇ、私、出来れば食べ物で冒険者を呼び込みたいわけ。

 魔道具とかポーションを出すって、妙な抵抗感があるのよ。 


 「ん”な”ー」

 座布団を抱えて畳をごろごろ転がる。

 「なんぼうだうだ言うた所で、冒険者の数が減るがは困るがよねー」

 冒険者が減ると言うことは、負の魔力の昇華スピードが遅くなるということ。

 結局、私が困るのよね。

 「仕方ないかぁ」

 なので、ポーションは出す事にする。

 宝箱のマークはコルク栓をした小瓶に決定。


 取り敢えず、下級を4種類。

 体力を回復してくれる体力ポーション。 

 傷を治す治癒ポーション。

 回復率は下がるが、体力ポーションと治癒ポーション両方の機能を持った回復ポーション。

 魔力を回復する魔力ポーション。


 さあ、冒険者達よ奮って魔物を狩るがいい!


 一体誰が一番ポーションを出すのか、わくわくしながらその時を待つ。

 ただまあ、モニターを見ているだけと言うのは暇なだけなので、手仕事を少々。


 何をしているかって?

 私が小学生位の時に流行ったミサンガ作り。

 暇潰しがてら久々に作ってみたら、意外にするする作れて楽しかったので嵌まってしまった。

 とは言え、作った物を置いておく趣味は無い。

 作った端からダンジョンマスターの力を使って素敵な魔道具へ変化させて宝箱へぶち込んで、そっとダンジョンへ設置している。


 うん、設置。

 宝箱を置いてみたのよ。

 掌サイズの、ちょっと洒落た金属の飾りを付けた宝箱を、分かりづらい場所へこっそりとね。


 ミサンガの効果が素敵なお陰で、存在を知られて以来大人気。 

 皆、密かに掌サイズの宝箱を探しているものだから、見ていると面白い。


 ミサンガがなんで大人気かって?

 ちょっと反則的な魔道具にしたからね。

 その名も、身代わりミサンガ。

 私のダンジョンでのみ有効な身代わりアイテム。

 即死や致命傷を受けた時に一度だけ無かった事にしてくれる便利アイテム。

 因みに、使い捨て。


 どう?

 反則的でしょ。


 死にそうになっていたのが、無かった事になるなんてどんなゲームのアイテムなのよ!って感じがするでしょ。

 うちのダンジョンでしか意味ないけど、欲しくなるのも分かるでしょ。


 うん、我ながら良い物を作った。

 自己満足で、にやにやが止まらない。

 「楽しいねぇ」

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