断シャリ!

堀北 薫

 断シャリ!

 私はありふれたOLのカナエである。仕事中は纏めていた髪を下ろし、友達とレッツラゴー!今日も頑張ったからご飯が美味しい。それは紛れもない事実であり現実だ。しかしそれと同時に敵でもある。

「ダイエットを始めたの」

「またぁ⁉︎これで何回目よ」

 夕方のファミレスで私と友人のマリは食事をしていた。私は拳を握りしめて言う。

「今話題の断シャリってやつよ!皆やってんだから効かないはずがない」

「捨てられない脂肪も体重も捨てますってこと?断捨離だけに?」

 マリはラザニアを頬張る。

「でも内容だけ聞いたら炭水化物ダイエットよね……、コレ」

「今度こそ痩せる!」

 鼻息を荒くする私にマリはウンザリした顔で言う。

「そういう新しいことに飛びつくより、基本的なところから見直したほうがいいんじゃない?運動をするとか食生活を改善するとか」

「食生活を見直してんじゃん」

「栄養バランスを考えた献立。あと間食や夜食を控えるとかそういうのを言ってるの。無理な食事制限はリバウンドどころか身体に毒よ」

 マリはフゥフゥとラザニアを口に入れる。

「今回は大丈夫よ。新ダイエット“断シャリ”はこれまでのリンゴやヨーグルトと違い科学的根拠があるから」

「リンゴやヨーグルトも科学的根拠はあるわよ。あと一番のツッコミどころはね──」

 マリは私の目の前の皿を指す。

「おもいっきりパスタ食ってんじゃん!」

「パスタは別よ!断だもの!」

「炭水化物には変わりないのでは?」

 ぐ、痛いところをついてくるなこの女子!

「ミートソースかけてるから0カロリーよ!」

「どんな理論だよ」

 私がパスタを口に運ぶと、マリはハハハと笑って言う。

「たぶん一生痩せられないわよ。アンタ」

「絶対痩せてやる!」

 マリはそう言ってくるが、仕方ないのだ。

 美味しいものを食べる喜びだけは生きてるうちには絶対捨てられないだろうから。

 絶品のミートソースパスタを頬張る私は、幸せに舌鼓を打つのであった。






─────【了】





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