第158話 エルベルト達の帰省

 無事にガンドリアの王城訪問を終えた翌日は、王都での買物も含めて丸1日を休日にあてている。

 マルテッラの買物に護衛として付き添いながら、魔道具店などを巡るレオ。

「目新しい魔導書などは無かったようね」

「はい、品揃えなどはルングーザ公国と同じぐらいかと」

「そうね。この辺りは小国ばかりだから。お姉様の嫁ぎ先のザガローマ帝国や、そこと敵対しているクロトリノ大王国ぐらいになると違うと思うわよ」

「何かに巻き込まれそうなので、この辺りで薬草などを仕入れる程度で我慢します……」


 その王都を過ぎてからも何事もなくガンドリア王国の中を進む。

「じゃあ、私たちはエルベルト達の出身の村に行くから、宿に居てくださいね」

「別に一緒に行ってあげても良かったのに」

「いえ、それは。先方の村で混乱が起きて大変になりそうですので……」


 マルテッラを街の宿に残し、エルベルト達の出身の村に騎乗で向かうレオ達9人。

「私たちも行っても良いのでしょうか」

「もちろんだよ、ケーラ。仲間たちも揃って来てくれる方が親達も安心するから」

「そうだよ。美人の皆を連れて行ったら、村に残った奴らにも自慢できるってもんだよ」

「もちろんその美人の中に私も入っているのよね?」

「え、あぁ、もちろんだよ、フィロ」

「怪しいわね」

 じゃれあいながら、分かれ道ごとにだんだんと舗装が雑になる道を進む一行。


「見えたぞ!」

 林や農地の中に、簡易な堀で囲まれた村である。入り口に衛兵が立つ規模でも無いようである。近づいていくと、何人かの男達が近くにあったと思われる長い農具や棒などを手に入り口に集まってくる。

「なんだ、お前達は!寒村だからと言って、盗賊に簡単にやられると思うなよ!」


「え!?」

「ちょっと待ってくれ!」「レオ達はここで待っていてくれ」

 誤解をされていると理解したエルベルト達は、この村の出身の男3人だけで馬を降りて近づいていく。

「おーい、俺たちだよ。この村の出身のエルベルトだ!こっちの2人はカントリオとメルキーノだよ!」

「なんだと?おぉ、本当じゃ。みんな、あの悪ガキどもが帰って来ただけだ」

「おい、あの大きな馬の集団は何なんだ?」

「まぁ落ち着いて。皆に説明するよ」


 大きな建物ということで村長の家にまずは案内される9人。馬もその近くに停めて屋内に入る。

「なんと、貴族様!誠に申し訳ありませんでした!」

 急に態度を改めて先ほどの無礼を謝り出す村民たちに、まぁまぁと座り直して貰うのに一苦労する。

「ということで、俺たちは貴族様の家臣になったんだ。こちらのレオ・ダン・コグリモ伯爵の。それもあって、先日はガンドリア王城の来賓館にも泊まってきたんだぜ」

 見るからに子供っぽいが色々と取り出される土産物や、証拠としての魔道具などから嘘ではないと理解された後は、エルベルト達の立身出世について盛り上がり、そのまま歓迎の宴になる。エルベルトたちがそれぞれの親兄弟を挨拶に連れて来たときに、親達から彼らをよろしくと泣いて頼まれるのには困ってしまうが、誇らしそうなエルベルトたちの顔を見るとそれも許せてしまう。


「エルベルト達って、愛されて育ったのね」

「もちろんさ。良い村だろう?ちょっと開拓を広げるのに苦労しているから、なかなか人口は増やせなくて貧乏ではあるけれどな」

 開拓の大雑把なやり方は、林や森の木々を切り倒し、その切株も含めて撤去した後、その敷地の中から大きな石を取り除くことと聞いたレオ達。天使や悪魔も含めた手数で木々を切り倒し、その倒したものは魔法の袋に収納し、切株は火魔法で燃やし、岩石も魔法の袋に収納するか≪粉砕≫で砕くなど、通常の人手では簡単にできないことも、魔法の応用で切り開いて行く。

「レオ、みんな、ありがとう!ここに農作物が実るようになれば、口減しも考えなくて良くなるだろう」

 もう少し奥地で、食肉になりそうな魔物や動物も狩り置き土産にして街に戻る一行。



「まぁ分かっているとは思うけれど、他国であまりやり過ぎてはダメよ。家臣たちの出身村だから張り切るのも分かるけれどね」

 街で合流したマルテッラに念押しされてしまうレオ。何となく気にはなっていたが、今後には気をつけることにする。

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