第157話 経路のガンドリア王国
以前、国王がかわる前のコリピザ王国が攻め込んできたガンドリア王国の国境付近。街道を通る途中でそのことに気づいたマルテッラから指摘される。
「ここでもレオの魔法に助けられたわね」
「いえ、それよりも、フルジエロ公子殿下の騎士団のご活躍が」
「そうね。それにしてもレオはフルジエロお兄様から気に入られているみたいね」
「え?気のせいだと思いますよ。もしくはマルテッラ様と同世代なので優しい目で見てくれているだけではないかと」
「ふーん、そう言うことにしておくわ」
レオは、第1公子が怖いのでできることならば関わりを減らしたい気持ちもあり、別の話題にすり替えていく。
「マルテッラ様、王城への立ち寄りは避けることができないようです」
「誘拐されたとき、レオを使用人に迎えたときのどちらのときも素通りさせて貰えたのに。仕方ないわね。レオ達にも伝えておいて」
宿泊するために街に入る際、城門で身分証明を提示していることから、その街の代官には公女達が通過することは当然に伝わる。マルテッラたちも好んで代官達に挨拶をしたいわけではないので、そのまま通過するつもりでそのようにしていた。
しかし最初の街からの伝令が王城にも伝わったようで、2つ目の街で宿に泊まっていると使者が来たようである。
「レオ、話は聞いた?王城に行くわよ」
「分かりました。護衛ですからお城にはもちろん同行しますが、控室までですかね」
「今回呼ばれたのは、前の戦争で友軍として参加した際に、治療などで活躍した私たちへのお礼ということよ。レオもきっと晩餐に呼ばれるわよ。正装の準備もしておきなさいね」
「はい……」
一行は馬車5台と護衛の7騎全てで王城に入る。面倒ごとを避けるため、控室には男性のエルベルト、カントリオ、メルキーノの3人が同行している。
「俺たちガンドリア王国の生まれだったけれど、まさか王城に入るなんて思ったこと無かったよ」
「レオ、粗相してしまうのが怖いから、おとなしく待っているな。頑張って来いよ」
「ありがたいのか分からない励まし、ありがとうね」
エルベルト達も一番上等な服には着替えているが、震えているのがわかる。レオは正装に着替えて、ドレス姿のマルテッラと共に晩餐会場に向かう。
「第3公女マルテッラ・ルングーザ様、そしてレオ・ダン・コグリモ伯爵、ようこそお越しくださいました」
「第1王子マンフラム・ガンドリア様、お誘いありがとうございます」
「あの戦の際には治療やコリピザ王国への打撃、誠にありがとうございました」
戦場で会ったことのある第1王子が出迎えてくれて部屋の奥に案内してくれる。
「ご紹介いたします。父王シャルタン・ガンドリアです」
「ルングーザ公国の第3公女、マルテッラ・ルングーザでございます。このような場を設けて頂きまして誠にありがとうございます」
「いや、ルングーザ公国のご支援のおかげで、先般のコリピザ王国の軍勢を撃退することもできたこと感謝している。その立役者のマルテッラ公女、そしてレオ・ダン・コグリモ伯爵が我が国を通過されるとのこと。ぜひ食事をともに、と思った次第だ」
「ありがとうございます」
貴族らしい食事の場がはじめてではなくなったレオだが、初対面の他国の国王、王子たちと一緒のテーブルで食事をすることは苦痛であり早く終われ、としか思っていない。しかし、その場がそれを許すわけもなく。
「マルテッラ公女の魔法は、コグリモ伯爵のご指導もあったとか。お二人の回復魔法には大変助けられました」
「いえ、そんな……」
「しかもコグリモ伯爵は、敵陣への夜の奇襲においても火属性魔法を多用されてご活躍いただきましたね」
「いえ、活躍など……」
「あのコリピザ王国の政権交代にも活躍されて、彼の国から伯爵に叙爵されている旨、伺っておりますよ。我らガンドリアのためにも政権交代はありがたく」
「流石ご存知なのですね……」
本当にどうしようもなくなったときにはマルテッラが話題に入って助けてくれるが、どちらかというとレオが他国の王族と対話している様子を見守っている感じである。
晩餐も終わり、王城の中にある来賓用の館に戻ったときにはレオは消耗し切っていた。
「おい、レオ、大丈夫か?」
「もう無理。ごめん、寝る……」
控室で待機の3人以外はすでに来賓館で食事を終えており、待機していたエルベルトたちはこれからなので、一緒に食べるか?と誘うつもりだったようである。きっと食事の場であっても食べられていないだろうというエルベルト達の気遣いではあったが、それに応えられる余力がない。
「レオはもう少しこういう場に慣れた方が良いわね。でも今日はお疲れ様」
マルテッラの指摘か励ましか慰労か分からない言葉も貰った後には、日課の訓練等も行うことなくベッドに倒れ込むレオ。
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