第155話 帰省準備
帰省にあたり、家臣達のことも改めて検討するように執事になったヴァレッドから念押しされる。
元々は、またしばらく留守にするので、ヴァレッドとウラリークの夫婦に家の管理をお願いとしたことがきっかけである。
「はい、家の管理のためにもお金をお預かりするのは結構ですが、仕官希望者などへの対応はいかがしましょうか?」
「え?」
「前回のご不在の間にも仕官希望の方はいらっしゃっていましたが、我々はその時点では単なる屋敷の管理人ですのでお話を承れないとお断りしておりました。しかし、我々夫婦も正式に雇って頂けることになったことはそのうち知れ渡ると思います」
「でも、今はこの人数で困っていないし」
「コグリモ伯爵!コリピザ王国では伯爵、ルングーザ公国の準男爵でいらっしゃるのですよ。伯爵なのはコリピザ王国としても、この公都ルンガルでも貴族街で立派なお屋敷を構えられても良い方なのです。家臣の数も、です」
「確か騎士爵になったとき、金貨10枚の年金で家臣が2人と言われていたかな」
「はい、確かにそのぐらいが妥当かと。今のコグリモ様は貴族年金がミスリル貨3枚と金貨20枚、つまり金貨では320枚ですので32倍ですと単純には64人ですね」
「今は、ベラやエルベルト達で8人、ヴァレッド夫婦の2人、コリピザ王国の屋敷に5人……」
「それですと戦闘できる従士は8人と見られますので、普通ならばあと20人ほどは追加を求められるかと。コリピザ王国でご活躍の実績があり実人数以上の戦力と理解されている国家中枢の方々からはあまり言われないと思いますが、仕官希望の方にとっては狙い目と思われるかと」
「うーん、すぐには考えられないかな。これから帰省して不在にするし」
「こちらルングーザ公国では準男爵ですしこの屋敷の大きさ等から諦めてくれるかもしれませんが、コリピザ王国では子爵規模のお屋敷とのことですので、きっと仕官希望者が押しかけているのでは無いかと」
「それは……あっちの執事オドリック達に上手くかわして貰うしかないかな。向こうにはしばらく行く予定も無いし……」
レオは面倒から逃げるためにも、公女マルテッラのところに帰省の挨拶に行くと言って屋敷から逃げ出す。
「あら、今日は魔法の家庭教師?約束はしていなかったはずだけれど。まぁ良いわ。色々と覚えたものを見せて貰いましょう」
「その前に、こちらを」
「え!?どうしたの、コレ?」
先日、ベラやフィロ達に魔道具のネックレスを買って配ったのだが、剣を振り回すわけでも無いはずのマルテッラにはブローチの≪魔力回復向上≫を購入していたのである。
「≪魔力回復向上≫の魔道具ですので、練習の際にでも」
「えー、珍しく気が効くじゃないの。まぁレオからのプレゼントなら使ってあげるわよ」
執事が大きく頷いているのが見えたが、間違いではなかったということであろう。
その後はレオが最近修得した≪霧氷≫などを披露したり、マルテッラの成長の確認をしたり、うまく行っていないところへアドバイス等を行う。
それも終わりお茶時間になったところで本題を切り出す。
「実は……」
「なんですって!?ヴァノーネ王国に帰る?公国には戻ってこないの?」
「いえ違いますよ、単に久しぶりに親に顔を見せに行くだけですよ」
「あ、そういうこと……そうだわ。私も一緒に行きます。レオの親に、使用人として預かると連れ出したのは私ですし、誘拐されたときのエルパーノ、トニー達の墓参りにも行かないと」
レオも流石に公女はそこまで自由行動が無理だろうと思って聞き流して帰宅したのだが、
「特にフルジエロお兄様が賛成して下さって、予定通り行けることになりましたわ。使用人達以外の護衛は頼もしいレオに依頼することにしますって。よろしくね」
という旨の連絡が家に届くのであった。
「え?本当か?公女様の護衛を兼ねながらじゃ、俺たちの実家なんて行けないよな……」
「ちょっと宿にいて貰う間に行けば良いんじゃない?そんな厳しいこと言わないよ、マルテッラ様は」
「って、お前のその公女様へのお気楽さがいつか不敬罪にならないか心配だわ……」
少しは免疫ができているエルベルト達でもこの状態であり、ラーニナやケーラにすると会話について行けない。スラム街暮らしだったベラとフィロはもっと、のはずであるが、彼女達もハイオークキングの騒動などで公女と一緒に行動する機会もあり免疫がついているので驚きはしていない。
「コグリモ伯爵!せめて同行されることになる8人の皆様に最低限の礼儀作法の習得のお時間をお与えください」
常識人であるヴァレッドが横から指摘をしてくる。レオも、自分が公女のところで使用人として学んだことをヴァレッド夫妻と一緒に伝えることになった。
さらにヴァレッドに指摘されて、ピエモンテ商会に走り色々と調達するものが増えた。
「9人だけでの帰省ならば騎馬のみでもと思っておりましたが、公女殿下とご一緒でしたらコグリモ家の紋章入りの馬車が必要です。もちろん何かの際のために伯爵は正装も何着か、皆さんも正装が1着ずつは必要です」
気楽なはずの帰省が、一気に憂鬱になってしまったレオである。それらを収納するために、1辺が5mの立方体ぐらいの魔法の腰袋も追加調達しておく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます