第151話 ルングーザへの帰国

ぐっすり寝られるようになり疲労も回復したレオ。朝食をとりながら今後のことを相談する。

「そうだな、戦争奴隷になったタンツィオたち6人が魔の森での狩りに慣れたら、ルングーザ公国に帰って良いんだよな?」

「じゃあ、前に話していたみたいにレオの実家の港町に行ってみたい」

「そうだよ、その途中で、ガンドリア王国の俺たちの実家にも行くって話をしていたじゃないか」

「そうだ、親たちに自慢しに帰らないと!貴族様の家臣になったって」

皆に確認したところ、以前に話をしていた軽口を実現したいらしい。


そうなるとますます、戦争奴隷への指導と並行して、この街だから出来ることを考える。再度冒険者ギルドの本棚を見に行くが特に目新しい魔術書の入荷はなかった。

しかし、魔の森の最前線であり冒険者が多い街であるため、関係物品の品揃えには期待できるはずである。残念ながら魔道具屋では現時点で興味をひかれるものはなかったが、武器屋で魔剣、≪炎付与≫がされたブロードソードとショートソードを見つけることが出来た。ケーラが味方になる前、レイスに苦しめられた砦でのことを踏まえると、魔法使いとしては他メンバより劣るエルベルトたちの装備を強化したいので両方とも購入する。今の経済力でなら購入できる額であった。

メルキーノは≪鋭利≫の短剣を所持しているため、エルベルトとカントリオの2人に提供するつもりである。

「レオ様、本当に貰って良いのか?」

「あぁ戦力の向上に直結するからな」

「じゃあ俺はこっちのブロードソードを!」

「カントリオ!まぁ良いか、じゃあ俺はショートソードを貰う。本当に良いのか?」

「これで3人とも魔剣持ちだな!実家に帰った時に自慢することが増えたな!」

家臣団の戦力向上だけでなく喜んで貰えたようでレオも満足である。ただ、女性陣からは武器のことで喜んでいる男性陣に冷ややかな視線があったことを後からベラにこっそり指摘され、女性陣にも別の何かをと考える重たい宿題を心に抱えることになってしまった。



魔法使いの戦争奴隷たちが自分たちだけでも魔の森に狩りに行けるようになったところで、レオたち9人はテソットの街を出ることになった。

代官だけでなく守備隊長などにも挨拶に行くと留まって欲しいとは言われはするものの、帰るところがあると説明して納得してもらう。

そしてルングーザ公国の公都ルンガルには、戦馬(バトルホース)の脚力を活かした速さで問題なく到着する。


元々借家であったのを買い取った家に向かうと、公女の執事にお願いしていた通り、執事の息子達が家の面倒を見ていてくれた。

「コグリモ準男爵、お帰りなさいませ。ヴァレッドと申します。いつも父がお世話になっております。こちら私の妻のウラリークでございます」

「あ、ありがとうございます。こちらこそお父様には色々とご指導を頂きまして」

「家臣の方も増えたようですね。良かったです。この家の北と東の方々は既に売却に合意頂いて退去されておりますし、3軒分、いずれも掃除はウラリークが行っておりましたので、問題なくご利用いただけます」

「え!?お預けしていた額では全然足りないですよね!?」

「大丈夫ですよ、第3公女殿下が立て替えくださりました」

「それって大丈夫ではないですよ!」


簡単に荷物をおろしたら慌てて公女マルテッラの屋敷に駆けつけるレオ。

「あら、レオ。もう使用人ではないのですから、そんな簡単に会えるとは思わないでね」

「って、会ってしまったら言葉に真実味がありませんよ」

「いやいや、あなたの息子夫婦も何で勝手に家を2軒も買って、そのお金をマルテッラ様に立て替えて貰っているのですか?それぞれ金貨何十枚もかかったと思いますよ」

「あら、あれは良いのよ、レオへの餞別、退職金が魔法の収納袋1つでは足らなかったかと思っていたから」

たくさんのお金を稼げるようになり自分の金銭感覚がおかしくなったと思っていたが、もっとおかしな人が居たことを認識させられる。

「それよりも、ただいま、でしょ。色々と頑張った話は聞いていますが、本人の口から聞かせて欲しいわ」

「はぁ」

マルテッラの求めに応じ、コリピザ王国でリブレント王国軍を撃退したあらましを報告し、悪魔教団に操られていた2人を保護して家臣にしたこと、コリピザ王国で伯爵に陞爵(しょうしゃく)されたことなどを話す。2人の犯罪奴隷が増えたところで嫌な顔をされてしまったが、仕方ない。


「じゃあ、今から登城しましょうか。お兄様達にも報告して頂かないと」

「え!?」

「だって、コリピザ王国へ派遣を指示したのは私ではないですから。元雇用主として同席してあげても良いけれども」

確かに、宰相と第1公子の指示であった。まだ第3公女への報告だけで済まないことに慣れていない。


ルングーザ公国においては準男爵程度の身分であり宰相や公太子に軽々しく会えないはずなのに、第3公女と一緒の登城だからか、すんなりと対面の時間を貰え、コリピザ王国でのことを報告する。

「既にコリピザ王国から使者が来ており、お前の活躍や伯爵にすることを聞いてはいた。よくやってくれた」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る