第149話 リブレント軍の撤退
レオ達だけがリブレント軍に追いかけられる形で、テソットの街の南、東、北と順に逃げている。
その頃、レオ達は知る術も無いが、王太子達のコリピザ援軍も全力でリブレント軍を追いかけている。リブレント軍には騎兵と歩兵が居るのだが、当然に遅れている歩兵に対してコリピザ軍が追いつき、戦うものは騎兵達に倒され、降伏するものは武器を手放して道を開けるように指示されている。
レオ達が街の北東に進んだ頃には、リブレント軍も騎兵と歩兵が完全に分離され大きく2集団に分かれたところで、テソットの南門が開かれアスコンカ率いる騎兵隊が駆け出す。そしてリブレント軍の騎兵の背後から襲いかかる。
リブレント軍の歩兵は王太子達の援軍にて、騎兵はアスコンカ達にて蹴散らされていることを、レオ達は知らない。
「あぁ良かった、北門は開いているぞ!」
「あぁ……」
「よし、皆、なんとか開いているうちに逃げ込んで!」
レオ達が北門から街に入り込むのと入れ違いで、テソット守備隊が外に攻め出す。
「どういうことだよ、いったい……」
「もう分からないけれど、もう休憩で良いんじゃないか、俺たちは。きっと囮だったんだろ……」
レオ達が街に逃げ込んだのを見たリブレント軍の騎兵は追いかけるのを諦め、テソット守備隊から逃げるようにさらに北上していく。とはいえ、ずっと走って来たリブレント軍は、いま駆け出してきた守備隊から逃げられない者も多い。ただどうしても兵数の差があり、特に幹部と思われる者達を捕まえることはできなかった。
降伏したリブレント軍を、街の外にとどめておき、王太子軍も戦利品などを持ってテソットの街に入る。
ながらく防衛戦を続けてきていた街の住民達は、待ち望んだ解放を祝い街中が盛り上がる。その喧騒の中、代官館に集まる王太子達。追撃戦は免除されて治療活動に専念していたレオも仲間達と分かれてその場には呼ばれている。
「王太子殿下、援軍ありがとうございました」
跪いて下段でお礼を述べるテソット代官のマリアーノ・ダラム。
「いや、到着が遅くなり申し訳無かった。その間、代官としてよくぞ持ち堪えてくれた。感謝するぞ、ダラム男爵」
「いえ、先発隊として送り込んでくださったコグリモ子爵、アスコンカ子爵達のおかげです」
「そうだな、その2人も含めて、皆のおかげでテソットの街は守られた。皆に感謝するぞ!」
捕虜の見張りなど一部を除いた将兵には、今まで控えさせていた酒なども振る舞われ、街中でも一般住民や冒険者達も騒いでいる。
「コグリモ子爵、こちらへ」
レオが案内された個室には、タージリオ・マストヴァ・コリピザ王太子、マリアーノ・ダラム男爵だけが居た。
「コグリモ子爵、色々と申し訳ありませんでした」
代官のダラム男爵が謝罪をしてくる。
「怒らないであげて欲しい。私も了承して、代官には悪役になって貰っていたのだ」
今回の囮のことかと思って話を聞き始めたレオ。しかし、まさか代官がリブレントに内通した振りで情報収集をしていたとは知らず。言われてみると、なぜかテソット到着早々から魔の森付近で襲われたり、やたらと夜襲の指令を受けたり。今回の囮の話だけでは無かったようである。
「そのおかげで、今回のリブレント軍のタイミングを知ることができ、こちらの被害を少なく撃退することが出来たのだ。全てはコグリモ子爵の主従の力のおかげだ」
「夜襲については、単に怪我をせずに帰還されるだけではなく成果があったので、ついつい調子に乗って多くのお願いをしてしまっていました……」
王太子、その親族である男爵に謝られるとそれ以上は何も言えないレオ。
「人が良いだけでは国家の運営はできないのだよ。貴族も含めて腹芸ができないと。コグリモ子爵もそんなに驚いた表情を見せず、そんなことは分かっていましたよ、という表情をできるようにならないとな。今度は伯爵に陞爵(しょうしゃく)して貰うのだから」
「ほら、そうやって驚く顔を見せない。成果を踏まえたら当然の話だろう。前回でも周りへの影響を考慮して子爵に抑えたくらいなので、今回はそれほどの手柄がなくても伯爵にする計画だったのだが、ここまで成果を出したのだ」
「私はまだ男爵のままで結構ですので。このまま冷遇されていると見える方が、内通と思わせる裏工作がバカ相手には続けられますので」
「親族とはいえ、すまないな」
色々と疲れてしまったレオは、一緒に祝おうとする幹部達から「子供ですので」と逃げて宿屋に戻り、裏事情も含めて仲間達に伝えるとベッドに倒れ込む。
納得と不満の顔など色々な表情を仲間達もするが、レオのことを思うとそれ以上は言わずに寝に行かせる。
「レオ様は寝られました」
「はぁ、まぁ貴族って大変なんだな」
「良いように使われた感じだけど」
「伯爵様か。俺たち、このままで良いのかな」
「ちゃん貴族の家臣らしい方も早く雇って貰わないとダメですよね……」
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