第139話 テソットでの迎撃3

リブレント王国の先発隊は騎馬など移動速度を優先していたため、食料などの輜重隊は少なく、攻城武器も持参できていなかったので、テソットの街を攻めあぐねている。もちろん、上級魔法の使い手が複数いなければこんなことにはならず、強引な力攻めで占拠するつもりであった。

「テソットには一体何人の上級魔法使いが居るというのだ!?小紺魔だけではないのか?」

「は、噂ではあの小紺魔と一緒に居た2人もそこそこの上手(うわて)との話でしたが、今回のように4箇所それぞれに複数の使い手が居るのは想定外です。王都からの応援部隊、本隊に居るはずの魔法使いを先に送り込んできたのかも」

「我が軍の本隊ももうすぐ到着する。それまでに手柄をあげないと、先発隊の我々は恥をかいてしまうぞ!」

「拙速な攻撃で被害を増やした方が問題になる可能性もあります。予想以上に敵の体勢があったのですから、被害を減らすのも選択肢ではないでしょうか?昼間に休息を取り夜襲へ対策を行うなど」

「くそ!……わかった。そうだな。夜襲への罠を準備しろ。上級魔法使いを減らしたとなれば、十分な手柄と言えるだろう」

「は、かしこまりました!」


夜襲あけのレオ達は遅くまで寝ていたのだが、誰も起こしには来なかった。

「今日の敵襲は大丈夫だったようだな」

「夜襲が効いているのか、先発隊だけではテソット攻略が難しいと思ったか……」


昼前になると代官からの使いが来て、今夜も夜襲を行うことと昼間も適当な防衛は行うことを命令される。

「本当、あの代官様は人使いが荒いな」

「他に頼りになるのが居ないと言うことでもあるのだろうな」

「ま、エルベルトもカントリオも抑えて。支援に来た俺たちはその役割を果たしておこう」

「まぁ一番大変なレオ様が良いのならばやるだけやるけど」

東門側が狙われているということもないようで、それぞれの門そして城壁に迫ってくる敵兵の数は急に減った気配がする。しかも致命傷を負うことが無いように、遠くから矢を射かけてくるだけであり、梯子により城壁に取り付くようなことはして来ていない。テソット防衛側も通常の弓矢の攻撃で反撃するだけであり、確かに本隊が到着するまでの時間稼ぎをしているだけにも思える。


夜になり、前夜と同様に夜襲のためにベラとケーラを城門の外に≪飛翔≫で連れ出したところへ、矢の大量攻撃を受けてしまう。念のために先に召喚していた天使グエンによる≪結界≫のおかげで怪我をすることは無かったのが幸いである。

「夜襲への対策として、城門を抜け出るところを狙われてしまったのですね」

「門までは開けずに≪飛翔≫にしていたのに。4門すべてを見張られていたのか。魔法使いを準備していないところを見ると、どこの門とのあたりはつけずに待機していたのだろうね。危ないから、2人はこの城門の上から、アクティム達を送り出して対応して」

「そんな。レオ様は?」

「≪飛翔≫ができるから、奥の方まで行ってくるね。逆に手薄になっているはずだし」

推測通り東西南北いずれも城門に近いところへ遠隔攻撃ができる者を集めた陣形になっているようで、逆にその奥の陣は手薄であり、レイスという手数は減ったもののレオ自身と天使グエン、悪魔アクティムとファリトンによる魔法攻撃で、それなりの被害を与えることに成功している。昨夜のようにリブレント王国軍の魔法使いによる反撃も少しはあったが、夜空を飛ぶレオ達に当たることもなく、逆に魔法使いの居場所を把握できたのでそこを狙って攻撃する。

東西南北4陣営それぞれにそれなりの攻撃を行い、代官館への報告の使者を出した後は、待っていた仲間達と一緒に睡眠をとる。



「どういうことなんだ!なぜ敵の魔法使いは減らず、うちの魔法使いが負傷して被害を増やしてしまうのだ!」

「上空を飛ぶこともできる上級の魔法使いが何人も居るように見受けられました。このままでは被害が増えるだけです」

「ではどうすれば良いのだ!?」

「包囲を解いて、いったん引き下がりたいところですが、それでは先発隊の意味が無かったことになりますよね。昼間は最低限の攻撃だけにして、夜間も下手なことはせず、篝火を盛大に焚いて敵が少しでも攻撃しにくいようにする、こちらの魔法使いは温存して弓矢による攻撃だけにすることにしましょう。もう直ぐ本隊も到着するはずです。少しの辛抱です」



リブレント王国軍幹部の思惑通り、昼間は時間稼ぎの攻防、夜も攻撃者がレオ達だけということから被害も限定的となり、こう着状態が数日続いたところで、リブレント王国の本隊がテソット北部に到着する。

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