第138話 テソットでの迎撃2
前夜には夜襲をし、昼間も4門に分かれて迎撃していたレオ達は翌朝までグッスリ寝た後、代官館に呼び出しを受ける。
「コグリモ子爵、今夜も夜襲を行って貰いたい。そのため、昼間は城門を破られない程度に手を抜いて貰いたい」
「それでは、我々は1門か2門だけの守備でよろしいでしょうか」
「いや、元々魔物向けに頑丈な城門がある東門以外の3門は継続して上級魔法による防衛をお願いしたい」
「……かしこまりました」
「相変わらずだね、あの代官」
「ま、レオ様はそれを見越してのあのやりとりだったんですよね?1門だけでも減らす了承を得るための」
「まぁね。伝言で様子を把握できなかったフィロ達が西門に来てくれると俺としても安心だしね。夜襲は空を飛べる俺と召喚する天使、悪魔、死霊だけのつもりだからフィロは昼間に頑張ってくれるかな」
「任せておいて!」
リブレント軍はこの日も流石に投石機までは用意できなかったようだが、梯子(はしご)は即席で作成して来たようである。≪石壁≫などで強化された城門への攻勢も継続だが、それよりも城壁のあちこちに取り付くようにやってくる。
コリピザ軍も、昨日は城門に注力していたのを、敵に合わせて城壁に守備兵を散らしているが、数が追いつかない。城門の守りは≪石壁≫に期待しつつ、レオ達が門に近い梯子に対して火魔法で攻撃するなどしのぐ間に、一般の冒険者達を召集している。昨日までのレオ達の活躍のおかげで兵数ではかなり劣勢なのに戦果では優勢に見えていて、冒険者達も勝ち馬に乗るためか積極的に集まってくる。
「北門、南門の様子はどう?」
レオがベラとケーラそれぞれの様子を悪魔達の伝言で確認するが、どうも北側と南側は使ってくる梯子の数が西門に比べて少ないようである。
テソットの街は南北に街道が通っている場所にあり、東方面は魔の森が目の前にある。西方面は少し草原を進んだ先から森が広がる。その森は、ずっと西に行くと先日まで居た砦に繋がる。
それもあり、リブレント軍が西側の森に紛れて近寄って来たのに気づかなかったのだと思われる。また、今回の梯子の材料も西の森から調達したのであれば、南北の城壁に対する梯子の数が少ないのは納得できる。
「レオ様、それならば東側は西側よりも梯子が多いのかも」
エルベルトの発言が呼び水になったのか、レオの元に代官からの使者が来る。
「コグリモ子爵、東側へも支援にまわって下さい」
「……」
仕方ないので西門前の≪石壁≫を補強してから、レオは天使、悪魔たちも連れて東門へ≪飛翔≫で移動する。フィロ達には自分たちの安全を優先するように念押ししてある。
東門に近づくと、確かに西側よりも多くの梯子が城壁にかけられており、一部は城壁の上に敵兵が登って来ているようである。
「コグリモ子爵!ご支援、ありがとうございます!」
東門の守備隊長に、駆け付けるとすぐにお礼を言われる。やはり感謝を言葉にして貰えると、励みになるものである。
「まずは梯子を燃やしてまわります」
「よろしくお願いします!」
既に城壁に登った敵兵への対処は味方でも可能な範囲とみて、それよりも城壁に追加の兵士が登れないように梯子自体を燃やしてしまう作戦である。
「グエン様、アクティム、ファリトン、梯子への火魔法からよろしくお願いします」
と指示しておきながら、自身は門前の≪石壁≫を補強して、その前に≪炎壁≫を発動していく。これにより門ではなく壁の防衛に専念できるとなってから、レオも各梯子へ登ろうと待機していた敵兵に≪爆炎≫≪豪炎≫などの攻撃魔法を次々と放つ。
敵の梯子により不安も出たが、何とかその日もリブレント軍を撃退できたコリピザ軍は敵兵が東西南北それぞれの陣地に引きあげるのを見て、勝鬨(かちどき)をあげる。レオ達は宿屋にて集結し、互いの無事を確認する。
「レオ様、やはり夜襲に向かわれるのでしょうか」
「ま、そうするしか無いだろうね。だから、特にベラとケーラも早めに寝ておこうね」
「かしこまりました」
夕食の後は直ぐにベッドに入り、敵も寝入り夜襲が可能になると思われる深夜までは寝ることにした。
そしてその夜にも、東西南北それぞれに分かれて設営されていたリブレント軍の陣営に対し、レオは≪飛翔≫で上空から夜襲を行う。自身でも天使グエン、悪魔アクティム、ファリトンを召喚しただけでなく、ベラとケーラによる召喚、それにケーラの用意したレイスも引き連れての攻撃になる。ゴーストは敵の武技などによりダメージを負う可能性があるため、このタイミングで損耗しないためにも使用は避ける。
敵陣からの魔法使いによる上空への攻撃もあったが、当てずっぽうであったようでレオ達は被害を受けることなく、夜襲を完遂する。魔力回復ポーションも使用した連続攻撃を4箇所それぞれで1時間ずつほど行い、夜明け前に宿に戻る。
フィロは待ちきれずに寝てしまっていたが、それ以外の仲間達はレオの無事の帰還に安堵して皆で眠りにつく。
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