第137話 テソットでの迎撃

テソットの西に陣取っていたリブレント王国軍への夜襲を終えたレオ達は、街の南部を経由して東門近くにまで戻り夜明けを待つ。夜明けと共に街に入る時に、守備隊に代官館へ夜襲の結果報告を依頼した後は、宿屋で朝食をとり昼まで熟睡する。


皆が起き出して昼食を屋台の食べ歩きにするかと話しているところで

……カーン、カーン、カーン……

と警鐘が鳴り響く。

「おいおい、敵さんは疲れを知らないのか?」

「兵糧を焼かれたから焦っているのか、単に怒っているのか」

「確かに夜襲で混乱はさせられても、彼我の兵力差が大幅に縮まるほどの死傷者は出ていないだろうから、まだまだ力攻めされると負けるよね」

と話しながら装備をまとい、昨日と同じと思われる西門に向かおうとしていると、代官館からの伝令がやってくる。

「敵は数千という兵数にまかせて、東西南北すべての城門に張りついて来ました。コグリモ子爵の主従の皆様には各門に分かれて応援に駆けつけて欲しいとのこと」

「え!?嘘でしょ!」

「いえ、家臣が失礼しました。承りました、とお伝えください」

「そんな、レオ様!」

「仕方ないよ。上級以上の魔法が使えるベラとフィロとケーラと俺が分かれたら良いのだろうね。絶対に城門や城壁の上の安全なところからだけにするようにね」

「わかった。じゃあ、残りのメンバはベラさんにはシュテア、フィロには俺とカントリオ、ケーラにはラーニナ、そしてレオ様にはメルキーノ、で良いかな」

「いや、天使と悪魔が呼べないフィロのところにメルキーノも行ってくれるかな」

「レオ様をお一人にというのは立場的に……」

「俺は大丈夫。グエン様、アクティム、ファリトンとこちらは手厚くできるから。フィロを守ってあげて」

4門に対する敵勢力の比重もわからないが、陣の設営場所から近い西門への攻勢が一番厳しいとみてレオが受け持ち、北・東・南にはそれぞれベラ、フィロ、ケーラを割り当てる。

「何かあれば天使、悪魔経由で互いに伝言するようにしてね」


西門に向かうと守備隊長に声をかけられる。

「コグリモ子爵ですよね?お一人ですが、紺色ローブと仮面のおかげでわかりました。応援、誠にありがとうございます!他の皆様は?」

「東西南北それぞれを手分けすることになりました。敵の様子は?」

やはり敵の数は西が多かったのか、城門の外にはかなりの数の敵が押し寄せて来ていた。しかし速度を重視していたからか、攻城用の梯子などは用意されていないようで、弓矢による遠巻きからの攻撃が中心になっている。

レオは矢を避けるため盾を掲げながら、天使と悪魔たちと共に≪爆炎≫≪豪炎≫などを乱発する。敵方からも少量の魔法攻撃は飛んでくるが、中級以下の≪火炎≫≪氷刃≫であり、≪結界≫で防ぐことが出来ている。

切り倒した大木を馬で勢い良く引っ張ってきて城門を破ろうとしてくる者達がときどき現れるが、城門前に≪石壁≫を発動した上で、さらにその前に≪炎壁≫をつくるとしばらく時間稼ぎが出来そうである。

「アクティム、ファリトン、他の門を見てくるから、俺の不在をバレないように適当に敵に魔法を投げつけておいて」

と指示をして、≪飛翔≫で気になる東門へまずは向かう。


「レオ、西門は大丈夫なの?」

「とりあえずは、ね。やっぱり≪土壁≫を使ったね。フィロも偉いね。≪石壁≫も出しておくね。エルベルト達はフィロを矢から守ってあげてね」

「もちろん!任せておけ!」

同様に北門と南門のそれぞれでの≪土壁≫の後ろに≪石壁≫で補強をしてから西門に戻ると、守備隊長に詰め寄られる。

「コグリモ子爵、どこに行かれていたのですか?姿が見えないのに魔法はときどき発動されていて」

「いやちょっと用事をしに。でもちゃんと魔法は発動しておいたから守備は大丈夫だったでしょ?」

「はぁ、まぁ」

「それより、西のこちらが敵の主力部隊のようです。防衛をしっかりしましょう」

「え、なんでご存知なんですか?さっき伝令が来たので私もわかっただけなのに」

「(しまった……)それは魔法使いの秘密ということで」

誤魔化しきれていないことはわかっているが、守備隊長もそれ以上は聞いてこないでくれたのでそのまま夜になるまで、魔力回復ポーションも使いながら敵兵に対して攻撃魔法を発動し、防衛に努める。


その日はそのまま夜になりリブレント軍も引いて行ったことにより、レオ達も宿に引き上げて行く。レオが念の為に≪石壁≫を4門それぞれに補強してまわっている間に、ベラ達は気を利かせて、消耗したポーションの作成のために魔力回復の薬草を調達して来てくれた。そのため、夕食の後はレオが調合を続け、各自に再配布するのであった。

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