第136話 テソットでの前哨戦3

代官館を去った後は、宿で集まるレオ達。

「レオ様、ご指示の通り5体満足でないハイオークの死体は魔石以外を冒険者ギルドに納品してきました。ケーラとラーニナは銅級相当と認定するとのことです」

シュテアが収納袋をレオに返しながら報告してくる。

「それにしても代官の態度の悪いこと。東門、西門での活躍への労いの言葉ひとつすらなかったな」

「仕方ないな、そういう性格であると割り切ろう。それよりも西門の怪我人のところに行くとしよう」


西門では怪我人が治療所に運ばれていた。包帯を巻き、即効性のあるポーションではない傷回復薬などを処方されていたが、エルベルト達の練習も兼ねた回復魔法で完治させていく。

「コグリモ子爵、ありがとうございます!すぐに駆け付けてくださったお陰で怪我人も少なく済んだ上に治療行為まで。大変助かります」

「いえ、それよりも敵の様子を教えてください」

「はい、あのように少し離れたところで集結しております。今日は奇襲が失敗したのでもう攻めてこないとは思いますが、明日以降が心配です……」


治療行為とは別班で薬草等を追加調達に行っていたケーラ達と宿屋で合流したレオ達。

「レオ様、どうされるのですか?」

「夜襲をするならば体勢を整えられる前の今夜がチャンスだよね。夜ならば、ケーラの残っている死霊達も使えるし」

「はい、砦で使用する前にレオ様に捕縛されましたので、レイスとゴーストがいくらかは残っております」

「それに痛んでいないハイオークの死体とその魔石を使えば、同じCランクのゴーストを用意できるよね」

「はい、街の中では目立ちますので、森の中にでも移動して作業した方が良いかと」

「そうだね。夜に城門から出るのも目立つし、明るいうちに東門からこっそり出ておこうか」

「じゃあ、夕方まで仮眠しましょう。フィロ、ちゃんと寝るのよ」

「もうお母さん、恥ずかしいから言わないで」


フィロだけでなく皆で仮眠をとった後は、東門の守備隊長に言ってこっそり街から抜け出し魔の森に移動する。

「ではこのハイオークの死体を使って、と」

レオはケーラに指導されながらゴーストをつくりだしていく。

「なんか死体が消えていくのは変な感じだね」

「スケルトンやゾンビと違って実体が無いから、魔石に戻すこともできるんだね」

「はい、レイスとゴーストはこのように魔法の収納袋に入れることもできます。生物ではありませんので」

「魔の森でBランク以上の魔物を捕まえてレイスにするか、従魔にできれば良かったのに……」

「日帰りで行ける範囲では仕方ないよね」

「よし、準備もできたし、テソットの街の南を大回りして西に向かい出そうか」



日も暮れて来て、街の南西までたどり着く。遠目にかがり火が焚かれた陣営が見える。リブレント王国軍の見張り以外が深夜になって寝付くまで、改めて交代で仮眠をとる。

「そろそろ良いかな。まずはレイスとゴーストで騒ぎを起こさせよう」

「狙うのは警備に立っている下級兵だな。そうすれば魔法使いは居ないはずだし、魔剣の所持どころか武技の習得すら怪しいからな」

「じゃあ、ベラ、フィロ、ケーラは天使グエン様、悪魔アクティム、ファリトンを召喚しておいて。レイス、ゴーストで混乱したのを見計らってから陣営に火魔法を乱発させるように指示して。そのあとはエルベルト達と一緒に安全な距離をとったここで待機しておいてね」

「かしこまりました」

レオは≪飛翔≫が可能なため敵陣営の上空まで飛んでいき、そこからハイオークのゴーストを撒き散らし、混乱する様子を見てから天使、悪魔達と一緒に≪爆炎≫≪豪炎≫などを乱発する。テスケーノでの夜襲と同じく兵糧らしき台車、馬車などを優先して攻撃する。

流石に数千人規模の軍勢には魔法使いも居たのか、水魔法が消火やゴーストへの攻撃のために発動されているようであるが、それこそ焼石に水という程度であり、かなりな被害をもたらしたと思えたあたりで、安全のためにレオ達も撤収することにした。


待機していたエルベルト達のところに戻ると、レイスの被害はなく5体とも無事であったが、ハイオークを含めたゴーストは4分の1ほどがやられてしまったようである。魔剣の所持者がそれほど居ないだろうが、武技を習得している将兵はそれなりに居ると思われるため仕方ない。

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