第130話 元教団員ラーニナとケーラ

王城での報告も終えたレオは子爵邸に戻り、シュテア、ラーニナ、ケーラと合流する。ラーニナ、ケーラの両名については、犯罪奴隷にすることで悪魔教団の洗脳を解いてからまともに話し合ったことが無かったので、他のメンバが居ないところで一度時間を取ることにした。

「シュテアは子供の時に拐われて教官役に育てられて来たことを聞いたけれど、ラーニナとケーラはどうなのかな。そもそも2人の年齢はいくつ?」

「私も子供の時に拐われて、こちらの教官役でしたケーラ様に育てられました。だいたい同じように育った感じなのでシュテアとはほぼ同じ歳だと思います」

「ラーニナ、もう私への敬称の様は不要ですよ。2人とも教団からは解放されたので。で、本題ですが、私も子供の時に拐われて、既に死亡している教官役に育てられたので正確な年齢はわかりません。ただ教団で過ごした時間を踏まえると、彼女達より10歳ほど上だと思います」

「そうか。では、ケーラ、ラーニナもシュテアと同じように1月1日を誕生日とすることにして、ラーニナはシュテアと同じ16歳、ケーラは26歳としよう。ちょうどベラが同じ26歳だから仲良くするようにね」


続けて、レオが興味ある2人の習得魔法や装備などの確認を行う。

ラーニナは水魔法を得意としていたようで≪種火≫≪火球≫、≪そよ風≫≪風刃≫、≪水生成≫≪水球≫≪洗浄≫≪氷刃≫、≪砂生成≫、≪灯り≫が習得済みとのことであった。教官役であったケーラは、それ以外に≪火炎≫、≪氷結≫≪氷壁≫、≪投石≫≪土壁≫、≪夜目≫が習得済みであった。さらに、悪魔ファリトンFaritonとも契約済みで、死霊魔法の初級≪骸骨≫、中級≪腐肉≫、上級≪幽霊≫、王級≪死霊≫が習得済みである。それぞれEランク魔物のスケルトン、Dランクのゾンビ、Cランクのゴースト、Bランクのレイスを生成できる魔法であり、レオ達も苦労させられた。

魔導書は、悪魔ファリトンとの≪契約≫≪召喚≫と、死霊の4魔法の2冊をケーラが所持していた。

その他に所持していた魔道具は、魔法発動体の杖以外では、ケーラが一辺5mの立方体の魔法収納の腰袋、ラーニナが同じく一辺1mの立方体の魔法収納の腰袋であった。それ以外の装備品であった短剣や、魔法の触媒、貨幣、生活用品などと合わせて、各々が所持していたものをそのまま持たせることにした。



ベラやエルベルトが合流してくるまでは時間があるので、冒険者ギルドで2人を木級冒険者として登録し、濃紺のローブと仮面も購入、さらに魔法発動体も指輪に変更する。

そしてレオはケーラに魔導書2冊の写本を作成させて貰うのと合わせて、悪魔ファリトンとの契約も行い、死霊魔法の練習も開始する。人間の死体だけでなく魔物や獣の死体を使ってでも死霊魔法は発動できることから、ラーニナとケーラの指導のために王都郊外の森に行ったところで色々と試行錯誤してみる。

ラーニナとケーラには、空魔石への魔力注入による魔力操作の練習、魔法発動体を指輪にした魔法発動の練習や、スクロールや触媒を用いた魔法習得の練習などをシュテアと一緒に指導する。また、自作の魔力回復ポーションを配っての、魔力切れを気にすることない魔法練習にも驚かれる。




ある程度は打ち解けて会話ができるようになったところでケーラに悪魔教団のことを聞いてみると、やはりシュテアやラーニナのように指導されるだけの側よりも色々な情報を持ち合わせていた。

なぜハイオークをあんなに使用できるのかと思っていたが、一般に知られていないハイオークばかりのダンジョンをこっそりと管理しているようで、そこから調達しているとのことであった。場所はコリピザ王国とリブレント王国の国境付近らしい。リブレント王国との戦争に目処がつけば行った方が良いかもと考える。

そしてケーラですら目隠しされて案内された教団の本拠地があるようで、そこでは床に描かれた魔法陣で、不特定の悪魔を召喚する場所があるらしい。そこで召喚した悪魔との契約にチャレンジして成功すれば一人前と認められるとのこと。教官役になったものはそこで悪魔との契約に成功した者であるという。

レオの興味としてその魔法陣の内容を聞いてみたが、残念ながらケーラはそこまで記憶できていなかった。




そうこうしているとベラやエルベルト達が王都にやって来る。

「砦は安全なままだったよ」

「宰相閣下も、もうリブレント王国は砦ではなくテソット付近での決戦に臨むだろう、と仰っていたよ。だからテソットに向かえって」

「そうか。しかし今回、ハイオークの襲撃での陽動など、軍師不足なんじゃないのか。いや、単純に人手不足か」

「そうだよね、反省しないと。でも、閣下から、このケーラとラーニナの2人を好きにして良いと言われたから、うちの戦力増強にはなったよね」

「それはやったね。上級魔法使いと中級魔法使いだよね。改めてよろしくね。俺はエルベルト!」

「俺はカントリオ!」

「俺はメルキーノ!」

「もうこの3人は女性相手にめっきり弱いんだから」

「フィロ、男性はそういうものだから気にしてはダメよ」


女性陣5人から引かれつつも、合流した9人で戦馬バトルホースに乗って、次の主戦場と思われるテソットの街へ出発するのであった。

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