第129話 砦攻防の終結

砦からある程度は離れた場所で、リブレント王国の将官と思われる男達が、黒ローブに詰め寄っている。

「おい、どういうことなんだ?陽動作戦は上手く行っていたのではないのか?」

「事実、強力な魔法使いが不在だったから、後一歩のところまで行っていたではないか」

「あの小さな濃紺ローブの悪魔のような魔法使いのために、我がリブレント王国は良いようにやられてばかりではないか!」

特にレオは素顔を見られると子供と舐められる可能性があるので、いまだにローブと仮面をつけて戦っていたのである。

「あんなのを悪魔とは!本当の悪魔はもっと崇高である!」

「そんなの言葉のアヤではないか。それよりもあの魔法使いを何とかしろ!」

「今夜にでも死霊で再び砦を脅かしてやるから待っているが良い」


黒ローブはリブレント王国の将兵から離れ、1人で砦に近づい来ている。

「それにしてもラーニナはどうしたというのだ。折角途中までは上手く行っていたのに……」

「ケーラ様……」

「ラーニナ?なぜここにいる?ハイオーク達もいるようだが、3体だけか?」

「それが……」

「クッ、何だ!」

ラーニナとハイオークを見せたことによる気の緩みを狙い、ラーニナについて行かせた悪魔アクティムによる≪氷結≫で黒ローブが怯む。その隙をついて、さらに≪氷結≫や≪睡眠≫で拘束して、魔道具などを取り上げて猿ぐつわを噛ませる。装備を取り上げていくなかでレオは気づくのだが、この教官役も女性だったようである。

「レオ様、ケーラ様も洗脳されているだけと思います。どうかお助けください」

「うーん、奴隷商人は砦にいないから、王都までは眠って貰うしかないか。明日にでも早々にリブレント王国兵を追い出して王都に向かわないとね」


魔術師隊のモデスカル隊長経由で砦防衛の幹部達に黒ローブを拘束したことを伝えたことで、翌朝に総攻撃をする準備を整えるコリピザ王国の将兵たち。そして夜が明けたところでリブレント軍の野営地を襲撃すると、残っていた兵士たちは大した抵抗も無く討たれるか逃げ出して行った。

「拍子抜けするぐらいあっさりでしたね」

「昨夜に死霊による攻撃がなかったことを察知した幹部達が既に撤退の準備を開始していたのかもしれませんね」

「では、昨夜に黒ローブを捕縛したコグリモ子爵のおかげですね」

「いえ、砦を守り切ったのは皆様の手柄ですよ」



戦勝に沸き返る砦ではあったが、つい先日に敵の陽動作戦に引っかかったこともあり、完全に終わったのか不安ではある。しかし、黒ローブの拘束もこのままでは不安があるため早々に奴隷契約を済ませたい。

「レオ様、いったん王都にご報告がてら黒ローブを連れて行って貰えないでしょうか」

「確かに。でもまた砦側で何かあったら困るから、二手に分かれようか。ベラとフィロは砦側として、エルベルト達も一緒で良いかな。3日経って砦に何もなければ王都に後追いで来てくれるかな」

「わかりました。では王都には、シュテア、ラーニナと捕縛しているケーラでしたか。レオ様でしたら大丈夫とは思いますが、どうかお気をつけて」

「ありがとう、ベラ達も気をつけてね」

今後の扱いが面倒なのでハイオーク3体の主はモデスカルに変更して、砦の防衛に役立てて貰うことにする。力があるので、堀の整備などに貢献して貰えると期待している。ラーニナやケーラが乗っていた馬も同じく砦に譲り、ケーラはラーニナの馬に一緒に乗せて運ぶことにした。


王都についたレオ達はまずケーラを奴隷商人のところに連れて行き、レオを主人にする奴隷契約の処理を行う。混乱しているケーラに対して、詳細の話はまた別途と言いシュテアとラーニナと3人でバトルホースなどの買物に行かせる。砦で倒したハイオークファイター達の素材の売却も任せている。合流場所は子爵邸として貰った館である。

レオは1人で王城にて宰相ホレイモン・ダラムと面会をする。今回の砦を攻めること以上のリブレント王国の軍事情報は持ち合わせていないことをケーラから聞いたことも報告する。

「そうか、リブレント王国から砦を守り切ったか。流石はコグリモ子爵。彼の国もテソットでの決戦が本命であろうから、砦にこれ以上の兵力を割くことは出来ないであろう。砦から後追いの仲間が揃えば、コグリモ子爵家の主従にはテソットへ向かって欲しい」

改めて捉えた黒ローブ達の犯罪奴隷にしたその後や倒したハイオーク達の素材や従魔の証などはレオ達が取得して良いこと、砦に販売してきたハイオークの代金や今回の報酬についてはテソット付近での決戦が終わってからまとめて精算されると説明される。

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